ENo.2100 姫百合神

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遠

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語ることも少なくなった。
昔話を思い出すのも、懐かしいと思うからこそだろう。

紬と私はあまり仲は良くない。悪くもないが。
元々、紬は黒百合の六家を継ぐこともなく普通に過ごすはずだった。
車百合の家系に女の子が生まれなかったからこそ、黒百合の第二子だったからこそ。

才能も素養も低く、努力こそすれどその実力は低く、何度も継承権を失い掛けていた。
琴音と私は年長者として紬に厳しく当たり、振るいに掛けるのではなく振るい落としに掛かっていた。
その度に凛とカノの後押しを受けてギリギリのラインで継承権を保っていた。

15歳の頃、やっと正式に輝夜を継承した時の紬は私たちのことを何とも思っていなかった。
厳しさに恨みの１つなり文句のなり不満なりを持っているかと思ったが、何もない。
純粋すぎるというべきか、単純と言うべきか。紬は不思議な子だ。

前向きすぎるのは姉によく似ているが、凛もカノも紬に助けられてもいるのだろう。
若干、カノに対する偏愛が強すぎることを除けば、良く出来た子だ。
決して恵まれた才能を持っていないからこそ、努力家で勤勉。

人に好かれるとても良い子だ。
高校生活が草加がいなくなったことで一変した私とは違う。
そういえば、紬はあの時の私と同じ16か…

○

「まずは確認していこう。私たちの目的はなんだろうか」

「紬とカノの挙式」

「いきなりボケなくていい」

「日本に戻ると無理ですが、ここは無法な世界ですから可能性はありますね」

「乗るな」

話をさせると横道に逸れるだけなので置いておこう。
まずやらなければいけないことは、

・草加を探す
・カノを元に戻す
・凛と紬の失われているマナを戻す
・最終的には元の世界に戻る

このくらいか。
今どのくらい、進んでいるかというと…

…

…

…

まったく進んでいない。
それもそのはず、この世界がどうなっているかすら、先へ行った者たちですらよくわかっていない。
どこが終端でそこになにがあるのか、それを調べるのが先決なくらい何もわかっていない。
つまり、何もわかっていないことだらけなのだ。

「問題が山積みだな」

「まったくじゃな」

…

「貴女の出番はまだ先だと思うが」

「ゲスト出演というヤツじゃ。なに、前に一度話したことがあるじゃろうに」

黒百合雪椿。
現在は転生を待っている黒百合15代であり、15代の信奉者たちが凛の身体に転生させようとしている人物。
現在は死者の世界を旅している…若作りしている。

「凛の身体を勝手に使っていただきたくはないが、せっかく来たのだから話でも聞かせてもらおう」

「失礼な口の聞き方じゃな。先祖は大事にせんといかん」

「三人の前でならともかく、一対一でその姿の人物話すのにわざわざ手間は掛けられませんね」

「それはわからなくもないな。さて、ではいくつか答えてやろう」

…
……
………

「やれやれ、相変わらず凛と神姉は悪巧みか」

「仕方ないよ。本家と話をつけられるのは二人しかいないんだから」

「そもそも交信出来るのも神姉だけだし」

「こっちはこっちでゆっくりしましょう。これからまた街を出たらゆっくり出来ないから」

「そうねーっていうか、ついていっても何もしないんだけど」

…
……
………

「そんなところかや」

「そんなところだな」

「まったく、15代に成れなかった連中というのはこれだからいかん」

「名門六家といえど、内部のごたごたがあれば派閥もありますからね」

「ワシがいた時は纏まっておったがのう」

「圧倒的なカリスマだからこそ失った後の指導者に困るというのは、ある話です」

「うちの娘はその点、指導者として不向きであったのじゃな」

「凛の母上はああいう人ですから」

「平時であれば良いのじゃろうが、ごたごたがあっても向かぬだろうな」

何事にもわれ関せず、しかし仕事は完璧。
出来る分だけ指摘しづらく、指摘しても改めない。
全てが出来た雪椿という15代を継いだからこそ、違うやり方を望んだのだろう。

…もっとも、16代は自分勝手な人間が他にもいるからもそういう代だったのかもしれない…

○

”鈴鎖”

話をしよう。
17代で最も若い、鈴鎖を継ぐ白百合葵。
現在は10歳である。

葵と凛は仲が悪い。
というのも、白百合は六家の中では一番規口うるさいのだ。
その家系で育った葵も当然、口うるさい。

凛は良く言えば自由奔放。悪くいえば自分勝手。
黒百合の家のルールも守らないことが多い。
そんな人間が17代の当主になるというのだから仲が悪いのも仕方ない。

もっとも凛からは葵を子供だとかからかいの対象だとか、そういう目で見ているから仲が悪いわけではない。
葵が一方的に敵視しているのだ。
喧嘩を吹っ掛けては凛に負けているところをよく見る。

葵の使う鈴鎖は流々舞とは相性が悪い。
捕縛術である鈴鎖は刀の速度を流れの中で無限に昇華させる流々舞を捉えきれない。
長年の技と経験こそあれば予測が立ち、五分の勝負に持ち込めることはあれど、
通常では鈴鎖が流々舞を打ち負かした記録はほとんどない。

あくまで鈴鎖は人に向けて行う捕縛術なのだ。
魑魅魍魎、化け物、化生との戦いにすら揮われること目的とした流々舞には、
変則的なその舞いを捉えきれず負けを喫している。

そういうところも、凛と葵の中の悪さに拍車を掛けている。
いつか本当に葵が勝つまではきっと仲は悪いままだろう。

「葵は一生懸命で可愛いのさねっ」

「凛さんがそうやって何かにつけて構いすぎるから余計に嫌なんだと思いますよ」

葵の世話はずっと小さい頃から凛がしていたから、ウザったいお姉ちゃんであるのだろう。

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闘技

「貫禄勝ちというとこかな」

「封殺されなかったし封殺できたからじゃない？」