ENo.2224 ローランド・マッカラム

フラン
波打つ豊かなプラチナブロンドに青い瞳。
重そうな鋼鉄のランスと鎧を着込む。

ディルク
赤い短髪に、緑の瞳。
大きな盾がトレードマーク。

ガストン
面倒見のよいベテランハンター。
禿頭とモジャ髭が熊を連想させる。

分割世界アルトアーデ。
エメラルドグリーンの美しい月が輝くその空の下、魔物とそれを狩るハンターとの激しい戦いが繰り広げられていた。

「よし、ディルク、フラン！もういいぞ、下がれ！」

合図と共に、水牛を１０倍大きくしたような魔物”バルクホーン”と対峙していた２人のハンターが後ろへ跳躍する。
いきり立った魔物は、着地の隙を狙いすかさず土煙を上げながら突進しようとするが、仕掛けておいた罠に足を取られてバランスを崩した。
次の瞬間、どこから飛んできたのかその頭部に狙い済ました矢の一本が深く突き刺さる。

「ブモォオオオオオ……！」

断末魔の咆哮を上げた後、魔物はズシンと重々しく地面に倒れた。

――倒れた魔物の撒き上げた砂埃がようやく収まると、大きな斧を担いだ戦士風の男が現れた。

「２人とも、よくやったな。」

フラン「ありがとうございます、ガストンさん」

ディルク「ふ〜……俺としては、あいつが興奮して暴れ出す前になんとかして欲しかったな」

ガストン「おいおい、そいつはロールに言ってくれ。あいつが一本目の矢をケツなんかに撃ち込むから……」

フラン「あはは。あ〜…でも、最後の一撃はすごかったですよね？」

ガストン「まあな。……おっと、噂をすればなんとやら。あの野郎、上機嫌でやって来たぞ」

ガストンと呼ばれた戦士がそう言ってニヤリと笑う。
しばらくすると、口笛を吹きながら巨大なボウガンを担いでまたひとり男がやってきた。

†

ローランド「よーう！お前等、見たか。たいしたもんだろ〜？」

ガストン「だってよ？」

ディルク「最高でしたよ、危うく俺もフランも潰される寸前でしたけど」

フラン「わ、わたしは別に平気でしたケド」

ローランド「ん？なんだよ……あ〜……あれか！お尻にクリティカル」

ディルク「それですよ！」

ローランド「いや、すまんすまん。俺も正直焦ったよ、まさかあんなところに刺さるとは。偶然ってのは怖いな」

ディルク「怖すぎますよ〜、もう勘弁してください」

ガストン「はっはっは！まあ、とにかくうまく行ったんだし、許してやれ。ディルク」

ディルク「ったくもう、しょうがないなあ」

……などと成功した狩りの余韻に浸る一同だったが、やがてフランが倒れた魔物をしげしげと眺めて呟く。

フラン「それにしても、すごい大物ですよね〜。街まで運ぶのは厳しくありません？」

ディルク「いくらフランでも、さすがにこれは無理か？」

フラン「ディルクさん……差し込みますよ？」

ディルク「なにを？！」

フラン「槍ですケド」

ディルク「……ごめんなさい」

ローランド「ははは！……ん〜、そうだなあ。ギルドに戻って、回収班を寄越したほうがいいだろうな」

ガストン「あと、ついでに大宴会の準備も頼んでおこうぜ。これだけの大物だ。みんなで食ってもまだ十分残るだろ」

それを聞いて青年が身を乗り出す。

ディルク「おお、やった！俺ギルドに入ってから、そんなのまだ１回だけしかやったことないんですよ。
しかも、今回は自分で仕留めた獲物じゃないですか……最高だな！」

フラン「ディルクさんが仕留めたワケじゃないですけどね〜。
……でも、わたしも大宴会なんて初めて。そんなにすごいんですか？」

ガストン「おう、すごいぞ！食糧庫の一部も開放されるからな。酒も肉も、飲み放題、食い放題だ」

ディルク「ごくり」

フラン「わあ、ほんとですか？！楽しみですね、ローランドさん！」

生唾を飲み込み喜ぶ２人だったが、ローランドはバツが悪そうに頭を掻きながら、

ローランド「あ〜…悪ぃな、俺は」

フラン「えっ」

ガストン「ああ、そうか。たしか今日は娘さん、誕生日だったっけな？」

フラン「え？え？」

ローランド「ははは、まあ、そういうワケなんだ。お前等、俺の分まで楽しんで来てくれよ」

フラン「えー！？ローランドさん、結婚されていたんですか？」

ガストン「なんだ、フラン知らなかったのか？こいつの奥さんと娘への溺愛ぶりは、話を聞いてるとアホらしくなってくるくらいだぞ」

ローランド「アホらしいとはなんだ、アホらしいとは」

フラン「そ、そうなんですか……」

ディルク「リシテアさんの手料理か〜、美味いんだよなあ。そっちも捨て難いぜ。俺もイーリスちゃんのお祝いに行っちゃおうかな」

ローランド「ディルク、おまえ絶対来るなよ。イーリスに近づいたらぶっ殺すからな」

ディルク「えっ？！えー……イーリスちゃん、まだ１０歳くらいでしょ？俺を一体なんだと……」

ローランド「今日でもう１２だ。イーリスは母親似でかわいいからなぁ……こうしてるうちに、お前みたいな変な虫がつかないか心配だぜ、ちくしょう」

ディルク「俺は虫ですか？！」

ガストン「はっはっは！ほらな、フラン。アホらしいだろ？」

フラン「わ……」

ガストン「フラン？」

フラン「わ……わたしも、そっちに行っていいですか！？」

（Eno2961の日記に続く）