醜い世界だ。

草花は枯れ果て、空は荒れ狂い、人々は奪い合う。
本当に反吐が出る。

俺は、被っていた帽子を少しずらす。
・・・この目を覆うように。

俺が願った所で何かが変わる訳じゃない。
俺一人が何をした所でこの世界は醜いままだ。

・・・ならば、この目を覆ってしまうに限る。


俺は、見慣れた帽子の裏地を眺めながら、ふと、元居た世界に居た赤毛の輩の事を思い出した。

アレは・・・何と言うべきか。
ペットと言うか。
相棒と言うか。
恋人・・・は少し違うな。

透き通るような綺麗な声で歌う奴だ。
色々と甲斐甲斐しく働くが、ひどく不器用で、よく何かを破壊する。
そして何より料理が物凄い。

・・・・あの味を思い出したら鳥肌が立ってきた。
・・・毛皮だが。


あの料理の味が懐かしい訳ではないが、何とかして帰らねばならん。
アイツの事だ。 今頃俺を探し回っている事だろう。



・・・・ふと、アイツの歌声が聞こえた気がした。
昔、俺が教えた、旅に出た恋人に恋焦がれる詩だ。

俺は、使い古した竪琴を取り出す。
その詩に返すように、音色を奏で始める。

・・・道行く人々が俺の姿を振り返る。
足を止め、この演奏に聴き入り始める。

・・・お前達じゃない。

・・・俺が今この詩を伝えたいのは、お前達じゃない。

・・・遠い世界で寂しがっているアイツに向けて。

俺は旋律を奏で続けた。

リィ(1303)の声が届いた：
リィ「防具Ｌ１５↑の方依頼したいです！魔石Ｌ１８依頼まってますっ☆料理作り誰かお願いします」

うぶめ(3204)の声が届いた：
うぶめ「明日も見えないですわ！」

くー(3094)の声が届いた：
くー「にゃあ」

ゴロウザ(2159)の声が届いた：
ゴロウザ「けッ、スライム風情が人間サマの形をしていやがる。」

アルテナ(2052)の声が届いた：
アルテナ「悪いスライムじゃないよー…」