ENo.3001 リューシャ・ツェレンスカヤ

ワカメマン「癒されるだろう？潮の香りは。」
Sea breeze！！

　磯臭い風が吹き付けられる。

　山育ちのリューシャにとっては、海を初めて見たのすらこの世界に来てからの
　話であり、そんな香りで癒されるはずもなかったが。

　しかも聞きかじった話では、潮風は金属に錆びを呼ぶらしい。

　――とりあえず、後で念入りに鎌の手入れをしておかなければ。

　　　普段からミギコさんのペットとして同行している人魚さんも、
　　　水飛沫を飛ばす技は使うけれど、淡水の出身なのか磯臭くは無いな。

　愛用の大鎌を振るいながら、そんな思考を巡らせられるようになったのは、
　この世界での戦いに慣れつつある証なのだろうか。

　とはいえ、他世界からの流刑者を狩るＰＫ行為にはまだまだ慣れないし、
　慣れてはいけない、とも思うのだけれど。

　ワカメマンに何度目かの攻撃を加えたところで、彼の特殊効果が発動した。

通常攻撃！

ワカメマンのTidal wave
技効果ではないので強制中断は未発生！
人魚に179のダメージ！
人魚のWAITが増加！
リューシャは攻撃を回避！
ミギコさまに154のダメージ！
ミギコさまのWAITが増加！

ワカメマンに240のダメージ！

　攻撃しようとしたリューシャに逆巻く濁流が押し寄せ、巻き添えを食らった
　ミギコさんと人魚さんが足元を掬われる。
　が、リューシャは軽くかわして、さらに追撃を加えた。

リューシャの追加行動！

通常攻撃！
ワカメマンに247のダメージ！

　油断した訳ではないが、大鎌を振り切ったその瞬間をもう一匹の敵が狙っていた。

うみねこ「輝く生命とは裏腹に、貴方の未来は闇に堕ちている。」
Waterfall！！

リューシャに448のダメージ！
リューシャのEVAが低下！
リューシャのMEVAが低下！
リューシャのSPDが低下！

「きゃあっ!?」

　頭上から、文字通り滝のような爆流が叩きつけられた。
　地面を転がるように逃れて体勢を立て直すが、既に頭のてっぺんからつま先まで
　びしょぬれになってしまった。

　どうやらこのコンビは、水攻撃で相手の動きを鈍らせるのが戦法らしい。

　ちゃんと意図を持って、息を合わせて攻めてくる相手は手強いが、うみねこは
　後方の中空を飛び回っており、どちらにしてもリューシャの鎌は届かない。
　うみねこの追撃を受けつつワカメマンに攻撃を集中する。

　まずは弱らせたワカメマンの方を倒し切る。
　それがミギコさんに叩き込まれたリューシャの戦い方であった。

うみねこの追加行動！

うみねこ「輝く生命とは裏腹に、貴方の未来は闇に堕ちている。」
Waterfall！！

リューシャに439のダメージ！
リューシャのEVAが低下！
リューシャのMEVAが低下！
リューシャのSPDが低下！

「ううっ」

　とはいえ、この滝攻撃はかなりうっとおしい。
　鎌を持つ手は滑るし、濡れた服に体温が奪われる上に、重くなって動きも鈍る。
　
　ようやくワカメマンを倒してふと自分の体に目を落とすと、ぴったり身体に張り
　付いたシャツに、ようやく膨らみかけたばかりの胸の形が露わになっていた。

「もうっ！」

　なんだか気恥ずかしくなったリューシャは、やけくその様に大鎌を振るった。

リューシャの行動！

必殺技が発動！

Slash！！
うみねこに804のダメージ！

　必殺技でも決めきれず意外としぶとかったうみねこもなんとか倒し、ようやく
　一息つくリューシャ。

人魚「あーあ。あげたかったのになぁ、貝。」

　戦いが終わると、いつものように大きな二枚貝の貝殻を残念そうに胸に戻して
　つぶやく人魚さん。
　胸のサイズはリューシャと大差ないように思われるが……露出狂なのだろうか。

　――と、ミギコさんがギョッとした顔でリューシャを見ていた。

「ちょ、ちょっとリューシャさん、貴方、ブラジャーしてませんの！？」

　ぶらじゃー？

　異世界から集められた罪人の世界でありながら、大概の言葉は通じる不思議な
　場所なのだが、その言葉は知らなかった。

つづく？