ENo.3404 クローディア＝センフィル

　今日から日記を付けようと思う。
　でも思ったことはほぼ口に出しているので、あの男の愚痴日記になるのだけは避けようと思う。

　ここまでの経緯も簡単に記しておこう。
　この世界を訪れて、まずは街を彷徨いていた。初めは様子見がてら近辺を歩いてみようと思っていたが、中々面白そうな人がたくさんいた。
　何か硬そうな白っぽい人とか。
　旅に慣れた飄々とした人とか。
　と、カフェに入り人間観察の真似事なんかをしていたときに一人の男が話しかけてきた。帽子を被った、何か毒にしかならないセンスを持ってそうな男だった。
　話によると、彼は望んでこの世界に来た訳ではないようだ。と言うか半分意味がわからない所がある。何、ゲートって。
　一緒に行きたいとのことだったので、その時は返事を保留して別れた。
　まぁ結局その彼、ウィゼルという男と一緒に行くことにした。実力だけはありそうだったのが理由だ。性格は……書いとくのはやめておこう。
　
　問題は、その後だ。
”まずは依頼をこなしてみよう”
　この共通見解において反対する理由も無く、リンゴ退治に私たちは赴いた。
　そしてそこで見つけたのは、やたらと筋肉質の、たぶんリンゴのかぶり物をした、変態だ。
　違う言葉で記すとしたら、リンゴのコスプレをした全身タイツのヤンキーだ。……何度か考え直したが変態にしかならない。
　少なからず、動き出したリンゴではない。うん、違う。たぶん。
　
　後れを取ったものの、なんとか退治したのだが、その後、あの男が勝手に居なくなった。アレのショックがあるのはわかるが、連絡取った後も指定の場所に来なかった。
　かなりの方向音痴のようだ。
　私は一人で森の中を歩いていると自分を迷子と言い張る怪しい男や、やたらと渋い羊（と言うか何で喋るの？）と出会った。
　というか戦った。
　が、そのどれもがやたらと強い。
　自分が弱いとか、まぁ色々考えはしたけど、この世界が異常だと考える方が正解だろう。
　一筋縄ではいかない、心にそう決めて、そうだと理解して、これからやっていかなければならない。
　……やたらと方向音痴のこの男と。

　色々あったが、街に来たことで休むことは出来た。ウィゼルとも再度合流は出来た。
　しかしこの男と話していると、思うところがある。
　どうやらこの男は言葉に何かと含んでいる。
　悪気という、嫌気という、何とも言えないがそんな感じを含んだ言葉が多い。
　悪意、とは少し違う気がする。
　実力だけは確かだ。お互い探るところもあるだろうし、今はこれで良い。この関係でいい。邪魔なら適当に搾り取れば良い。
　少なからず、一定の距離を保っている以上は、危険も及ばないだろう。
　
　街の近くで様子を見ることになったが、そこで見つけたのは………なんだろう。たわしに見える。
　こう、キッチンの掃除とかに使うアレだ。私が過ごした島でもヤシの繊維を使って作った、頑固の汚れはこれでイチコロよっ！なんて宣伝もした、あのたわしだ。
　そのたわしが飛んで襲ってきた。

　────────あとでこの日記を読み返しても訳がわからない気がしてきた。