ENo.670 DoRa・SiRa

※Eno.674　ダーシャ・ヴェルさんの日記と関連しているかもしれません！

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＝＝ドーラ・シーラの手記＝＝
幾人かの人間の名前が記されている…汚い字で、何か記録されているようだ

ENo.74 神殺し
□…
・大切な躯

Eno.674 ダーシャ・ヴェル
□騎士
・おいかけっこ

ENo.1012 ネパトラート・ククエ
□モンスター
・定期健診

Eno.1114　ゲオルグ・シェーファー
□…
・声をかけた

Eno.1472　ハンス・グリム　グレートヒェン・グリム
□…
・英雄の臭い

ENo.1673 ユベール
□…
・迷子捜索

Eno.2034 スチュアート・ノット
□…
・騎士の臭い

Eno.2091 ステラ・キュレイセン
□…
・ハッキング

Eno.2581 闇
□…
・果実を投げた

(むなくそ話ではとくにないかもしれない！)
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（かのじょのそばになげだされた
　痛みに対抗する為の悪の美学
　などとかかれた分厚な本には
　自分の人生をふりかえるようなことがつづられていた）

私の産まれた、その村は
そう小さくもなかったけれど栄えもしなければ大きくなく
学校はあったけれど　いける子は決められてた

その頃の世界は狭くて
私はどこの世界も似たようなものなんだろうと思っていたけれど

私達の村は、毎日が死と隣あわせだったわ。魔物の繁殖にやたらと好条件な土地だったの
どうしてそんな場所をわざわざ切り開いてすみはじめたのか、
論理的にはわからないから、きっと歴史的なことよ。てき、てきってうるさいわね。
まあ、どうしてかしら？っと少し疑問におもうほど、私達は魔物をきらっていたわ。
私達も獣をころすのだから、私達がころされるからきらいっていうのはすこしおかしなことだって
たいていの大人はそういっていたわ
いったうえで彼らを汚物だとか、ばいきんのように見るのよ。
きっとそれって憎しみね。
それからかれらを討ち取れば名誉と褒美が手に入ったからね。
どちらかを正当化するためにどちらかがあったのかしら
あるいは両方を正当化するために両方がもとめあって。

私達には脅威となる彼ら魔物に対抗するため
先に言ったような、暗黙の了解もふくめ
いろいろな決まりがあったわ。
そのうちの一つが、
子供は五つめの子のみ
という、それ。
女性にたくさん子供を産ませようとすること
子供の死に直面したとき、立ち直りをはやくさせること
少ない資材を一点集中させること
いろいろな内訳があるのだろうね。私は知らない。
でもそれは、決まりとは言えない−そうね、常識だったわ。
誰かがそれはそれは昔に決めたことだから、当たり前だったのよ、私達には。

さて
子供は五つめの子のみ
なんていうと、私には当たり前だけれど、はてなが浮かぶ方も多いみたいね
そうね
五、十、十五…と、五の倍数の子は学校にただでいけるわ。
その他の子は安くないお金を払わなければいけないし
大抵仕事を休むわけにも行かない
福祉のいろいろは五つめの子の為にあり
甘いお菓子やおもちゃだってその子の為につくられる
ええ、四人目までの子もちゃんと家族なのだけど
「子供」としては扱われないのよ
物心ついたあたりかしら？もう、大人と対等に接されるのだわ
戦い、働き、礼儀がなければ槍玉、そのまま、生存競争の世界へ入っているの
彼らは遊ばないし、周りを見、当たり前のようにきっちり割り切って
背筋を伸ばすの
同年代の−五つめの子は、憧れの存在だったのよ
無邪気で、可愛がられ、勉強もできて、安心して眠れる。
いつだって五つめの子は、憧れの存在だったのよ

私ね
私の母はね、その五つめの子を流産してしまったの。
待ちに待った自分の子供−それまでにも勿論産んではいてるのだけど、子供という認識がないの−を亡くしてしまって
彼女はそれはひどく嘆いたらしいわ　泣いて、服を引き裂いて、お皿を割って、畑をひっくり返したとか
だけどそれもいつか、そう時を経たない内に落ち着いたの
彼女はきっととても前向きだったのね
母は六人目の子をその身に宿しました
その子…
それが私よ、シーラよ。

私は。
私は五つめの「子供」としての人生を与えられました
もちろん母の五つめの子はもういません。魂を尊重するとかなんとかでその子をいなかったことにもできません。
どうしたって私は六人目の子でしょう？
でも、私は、母が与えたかった愛情のゆくさきとして、
仕事を取り上げられ、お金を払って学校へ行き、
母や父、他の兄弟達が切り詰めた生活費でお菓子やおもちゃを与えられ、
朝から夜から沢山働いているのを見ながら友達と遊びました

だけど私は六人目の子だわ。
随所でそれが浮き出るの
私は村の福祉を受ける身ではないし
子供同士ではそんなことは気にしないけれど
大人たちも母に気を使いそうことばには出さなかったけれど
私が子供ではないと、
そう、視線のようなものだったかしら。

とにかく、私はいつかそれに気づく頃、
同じように兄弟達の私を見る目にも気づいていたわ
彼らは私を愛し可愛がっているけれど
憧れ、崇拝のようなもので通してこちらを見ている
彼らの汗、水、血によって作られたきれいな服、安全な環境、それらを何もせずに受ける
五人目の子供でない私

私は六人目の子だと自分をわかっていたから、それに早く気づいたのね。
いつしか素直に（残酷に）言っては探すわがままが
のどにつっかえでてこなくなったわ
私は彼らに−遠慮のようなものを感じはじめ
考えて、どの程度のわがままなら許されるか、彼らを苛めないか、そして
どの程度わがままを言うのが彼らの憧れと足るか
私が甘えたガキでなければ母は世話を焼けないもの、
しかし私は本来子供ではない
私は考えに考えて、考えた。
考えて、シュミレーションして、思いついては、シュミレーション。
そうして細かに毎日に釘を刺すように幸せをはさみ
ああ今思えばすでに、その行為は。
私は無邪気な−彼らの欲した、「子供」ではなくなっていたの

そんな私の、悶々とした内面は隠しきれていなかったの、かしら？
私は授業でひとの子供のできる話を聞く頃
気づいたの
母、彼女は七人目の子を作ろうとしていない
七人目の子を作らないということは…
私ははっとしてその考えをとうとう認めました
私が彼女に何かを諦めさしたのだわ
私が完全に五人目の子じゃなくとも、彼女は私を愛していた
しかし何か、私に非はなくとも、彼女を疲れさせた
十番目の子を−私で子供はもう要らないと−
私が
もし、私が何か違っていたら？彼女に違う未来が？
−いや、選択肢というものを知ることもできなかった頃のことで、仕方のな、
子供でない私は
子供の人生を選ばされ
「子供」を提供する仕事についたんだろう。
そしてそれは、正解のかたちのないものだったろう
胸を張ることが出来ず
そこには後悔できるほどの要素もなくて

彼らの私に対する扱いも私の彼らに対する振る舞いも確立していなくて
そもそもそれは頭で考え始めた時点で直らないゆがみで
私は家族の中、自分が浮いているように感じてしかたなかった
仲はいたって円満な家庭だったけれど、私は

考えることで考える
考えて考えて、考える

私は考えました