ENo.3494 Elisabeth = Aruhn

私が生きてきた中で大きな人生の転機というのが二つあった。

ひとつは火の魔法と出会った時のこと。
とても熱い日のことだった。
里の図書館で一冊の古ぼけた本を見つけた。
そこに書かれた魔法は学校では教えてくれない初歩的ではあるが様々な火の魔法のことが書かれていた。

私はその魔法書をこっそりと持ち帰り、その中でも簡単そうな魔法を発動させた。

小さな……とても小さな火が出た。

その炎はとても小さかったが力強くそして何より･･･綺麗だった。

それからだった、私が火の魔法に夢中になったのは。
火の魔法を習得するのは里では禁忌とされていたのでこっそりとではあるが、夢中で学び、夢中で習得した。今でも楽しかったのを覚えている。

……そしてもう一つ、里を追い出されこの世界に飛ばされた時のことだ。

魔法書と出会ってから1年ほどしたころ、火の魔法を習得していたことがばれ、私は捕らえられた。
私は詰問を受けた後この世界へ流されることとなった。
それを聞いたとき私は喜んだ。
これで里という枷から解放され存分に旅し、その世界の魔法が学べる･･･と。

僅かばかりの食料と身の回りの品を持たされ私はこの世界に飛ばされた。

この世界の環境は悪く、安息の地も無く、内から外への道は完全に閉鎖されていた。
はじめの頃こそワクワクしたものの、すぐに生きるだけで精一杯になった。
無法者の追いはぎや人狩り、凶暴な生物、苛酷な環境。全てが私に死の影をちらつかせた。

しかし私は旅をし、学び、今日まで生き延びた。
運が良かっただけかも知れない。

こんなところだろうか？
なんにしても私は生き延び、そしてあても無く彷徨いこの街にたどり着き、そしてあの噂を聞いたのだ。

「この世界の隔壁の一部が破壊された」と――

この噂を聞いたとき私はこの世界を出ることを決意した。
この世界は生きにくい、なにより他の世界も見てみたくなったのだ。

この噂を聞いたこともまた私の人生の転機だった。
あても無く彷徨うのではなく目的を持ってこの世界を旅し始めるという転機だ。
この転機が私にとって大きな出来事か小さな出来事かはわからないが……。
私は身支度をし、共に旅する仲間を探すことにした。
幸いこの噂を聞いて多様な輩が活発に活動を始めているそうだ。
今なら仲間を見つけるのも容易いだろう。