ENo.913 チク・タク

野盗退治の依頼を何事も無く完遂し南下、スティルフに向かう。
残るはエスタへ向かう山道に巣食うハムスターを退治する依頼でスティルフで受けた依頼は全てという事だ。
しかし今一この依頼は理由がわからない、アップルや野盗は明確な被害があるのだろうがこちらは巨大化したハムスターが可愛らしいからどうしたのだろうか。
これが退治でなく捕獲ならば愛玩目的として理解できるのだが、もしやここセルフォリーフでは可愛らしいという事は脅威なのかも知れない。
戦闘記録映像を見ても野盗達に比べれば戦闘力も高くない。
多くの冒険者達が巨大なハムスターを抱きしめるなんとも和やかな映像だ。
まぁ子供には受けが良いだろう、ついでなので矮鶏上等兵にでも抱かせればそこそこの映像になる……。

「少将、スティルフの方、アンテセラからの物資搬入終わりました。
　それと闘技大会へのエントリーも終わってますよ。」

先の依頼に思考を巡らせているとテトラ少尉から報告が入る。

「ご苦労、不足は無いかね？」

「はい、リストに載っているものは全てグリーン。
　変質等も確認されませんでした。今作業員の方達が受入準備をしている所です。」

「うむ、スティルフに滞在している時間は少ない。
　配置図通り指示しておくように。
　到着したら先ずPIYOTTERの換装を済ませる。」

「それと定期連絡会に出席するように連絡が来ていますが。」

「把握している。今回の出席率はどうなっている？」

「陸・海・空の三大将が本社に到着済みらしいです、今頃あちらでは大騒ぎだと思いますよ。」

「時間が無いと言うのに酷い面子が揃ったモノだ……。
　こちらの報告順には間に合う、と返信を」

「欠席でも良いと思うんですけど、こちら側の状況は定期的に映像も送ってるんですし。」

「態々出席命令を出してきたと言う事は顔を見せろという事さ。
　それに大将が三人も揃っているのに少将が欠席するわけにもいかんだろう。」

「面倒臭いんですねぇ、私昇進したくなくなってきました。」

「ハッハッハ　欲が無いのも考え物だな。」

その直後今まで反応の無かった通信機の１つから音が漏れた。

「今何か聞こえましたけど……こちらには何も無いってことは少将の個人回線ですね？」

「うむ、すまんね　暫くこちらの通信は遮断する。」

「了解しました。ではスティルフでお待ちしています。」

―――ザザ―――ザッ―――こち――ザーー――を。
―――こちら――――、――を――。