『さあ行きなさい。良き人形は、良き主の元に。』
愛を受けて創られた少女と、望まれずに宿った魂は、今日も記憶の夢を彷徨う。

魂を描く天才と謳われた人形師サントーシェ・ホリゾントが、生涯で最初に産み出した駆動人形。
人であり人ならざる者として生を受けた彼女は、自らを肯定せず否定もしない。その魂の持っている価値すら、少女は知らないのだから。

少女は『生まれた理由』―素体に宿った魂の意味―を問い続ける。
人形でありながら、なぜ私の気持ちは揺らぐのだろう？

少女は『生きる目的』―自己の存在理由―を求め続ける。
この悠久の時の中で、私は何を成せば良いのだろう？

そして少女は『己を捧げるべき主人』を探し続ける。
―良き人形は、良き主の元に。―
創造主のその言葉は、いつだって忘れたことはない。


地平線をも超える長き旅路の末に、少女はこの躍動の世界へと足を踏み入れる。
心の在り処も分からないのに、少女は胸の高鳴りを確かに感じることができた。
その尽きる事のない探究心こそが、少女の原動力なのだろう。