ENo.2685 ミリサエラ・エダフォズリ

丁度おなかが空いたところに出てくるなんて、なんて食べられたがりのお肉なんだろうね♪
君たちは、今日の晩御飯だからねぇー♪

ルー「……ッ！はしゃぎ過ぎたかのう。やはり今の力では、過ぎた無茶は出来なんだか……」

ルー「しかし、無事なようで何よりじゃ。サエラ、それから、そこのわんころも含めてな」

サエラ「おにく〜♪おにく〜〜♪」

ふんふんふ〜ん♪　いや〜、試しにナイフ作っといてよかった〜♪
流石私！よく切れる！

ルー「ちょ、ちょっと待たんか。その肉、まさか……食す気かや？　腹を壊しそうな気がするのじゃが……」

と、ルージュさんが聞いて来た。まぁ、見た目肉塊が動いてるような変なのだったしなぁ〜。知らなきゃこんな反応かな？

サエラ「え？何を言ってるんです？　街でここら辺で取れるポピュラーなおにくだって聞きましたよ〜」

そうなのである。逃げるおにくはここら辺の美味しいお肉で一番手に入りやすいらしい。
解体しながら、血を皮袋に貯めていく。吸血鬼なら血が主食だろうしね。

ルー「そうなのかや？　我はこの世界の人間の食事事情というものには、まだ疎くてのう……ああ、血は取っておいて貰えると嬉しいのじゃ」

お腹を押さえながら言うルージュさんはお腹が空いているらしい。
野菜とか食べてもお腹が膨れないみたいなんだよね、見てると。

たま〜に、私の首筋に目がいっているのも見かけたし…。

サエラ「他のお肉になる動物は強すぎて狩れないので、一般的なのはこのおにくらしいです。血はこの皮袋に溜めておいたので、どうぞ〜」

薀蓄（街で聞いただけ）を語りながら、肉を小分けに切った後で水で洗ってから葉っぱで包む。一つ今晩様に大きめに切っておく。

そうすると、狼ちゃんが何か差し出してくれる。なんだろこれ？
匂いを嗅ぐとコショウだ！どこに持ってたんだろう！！

サエラ「あ！こっちでは珍しい香辛料！！　くれるの狼ちゃん？」

使っていいみたいなので使わせてもらう。

ルー「利口なわんころじゃのう……」

ルージュさんが興味深そうに見ている。やっぱり、普通の狼じゃないっぽいね。塗し終えたら回収されてしまった。残念。

ルー「ふむ。手馴れておるのう。我は調理というものが、どうにも不得手でな。我ら吸血鬼の食事は、獲物に直接口付けをし、牙を立て、血を啜るのが基本じゃからの」

と言って、渡した皮袋の中身を一気に嚥下するルージュさん。
というか、ルージュさんは貴族とかお姫様っぽくて料理とか俗っぽいことしてるとイメージと齟齬が出るのでイメージ通り出来なくてもいいと思う。

ルー「ふむ、悪くない血じゃ……さて。そちらの食事が終わったら出発かや？」

サエラ「そちらと違って火を通さないと、私は食べれないんで、野営場所見つけたらそこで調理ですね」

生で食べたらそれこそお腹を壊してしまうもんね！前に作った野菜炒めを食べるかなぁ〜？狼ちゃんに会ってから料理が上手くいっている気がする。なんでだろう？

ルー「なるほどの。では、この後は野営に適した場所を探すとするかのう」

ルージュさんは周りを見回している。周りを警戒してくれているみたい。

サエラ「そうですね、この血の臭いに惹かれて肉食獣が来る前に離れて野営地を探しましょう。君もついてくる？」

血を拭ったナイフをベルトに差してから、わしわしと狼を撫でる。

おお〜！なんという触り心地！モフモフだ〜！

尻尾振ってくれてるみたいだし、一緒に来てくれるのかな？

ルー「うむ。これ以上この辺りの獣の相手をすることもあるまい」

こっちの作業が終わったのを見て歩き出すルージュさん。

ルー「まあまあ、そう怯えることはないのじゃ、わんころよ。別に今すぐに取って食おうと言う訳ではないからのう」

ルージュさんが肩を竦めつつ言う。
ん〜？でも、狼ちゃんに食べるとかの会話理解できたのかなぁ〜？
でも、いきなり食べるとか言っちゃったのは拙かったかなぁ〜？
あとで、お肉上げようっと。戦闘でも戦ってくれたし！狼ちゃんなら生でいいのかな？

サエラ「そうですね〜、食料はいっぱい今回確保できましたし」

ルージュさんに並んで歩きだす。

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しばらく進むと、山岳地帯に入った。街で聞いた話だとここに住んでる奴は強いらしい。
でも、同じ落ちてきた奴に襲われて物を取られるくらいならそういう奴らが少ない山岳のがいいかなと相談してここまで進んだんだ。

ルー「ううむ、野営に適した場所のう……おお、あそこなど適しているのではないか？　水場も近いようじゃ」

ルージュさんが少し先にある一点を指さす。

ちょっと岩がせり出していて屋根代わりになる場所、その下の壁は窪んでいて風よけになりそう。水場も近いせいかたき火の跡があり、野営に使われている場所とわかる。

サエラ「いいですね！　今日はあそこに泊まるとしましょう！」

ぴょんぴょん跳ねながら指刺された場所を私も確認する。ちょっと見た感じよさげだね！

ルー「意外にも早く場所が見つかったものじゃ。あとはこの場が安全かどうかじゃが……」

ルージュさんがちらちらと周りを警戒しつつ。

サエラ「今のところいないと思いますけど…」

私も見渡すけど、気配とか分からないからなぁ〜自信無さげになる。

狼ちゃんもフンフンと匂いを嗅いでいるみたい。私よりも敵を見つけるのは上手そうだ。

ルー「ふむ。どうやらお主の言う通り、危険は無いようじゃのう……さて、先ほどの戦いで、身体中砂埃まみれじゃ……御主が調理している間、我は軽く水浴びでもしてくるとしよう。ちと寒いがの」

どうやら運よく敵はいないみたい。確かに薄汚れてしまっているね、今の私達。まだ私は作業場に引きこもって延々と鍛冶してたりするから慣れてるけど、お姫様っぽいルージュさんには耐えがたいのかなぁ〜。

熊のぬいぐるみを適当な場所に置いて、水場に行くみたい。

サエラ「さぁ〜て、燃やすもの探そうかな〜」

調理や、たき火のためにも薪はいる。鍛冶のために火打石や火付け材は常備してるけど薪は嵩張るから持ってない。探さないと。

案外簡単に見つかるものだね。今が冬っぽいせいか枯れ木は良く見つかった。一晩ならこれくらいで足りるだろう。

手早く火を点ける。鍛冶で手馴れたものである。

たき火の左右に石を積み上げて、上に持っていた鉄の棒をいくつか渡す。

これで焼くだけの調理ならできるね。

さぁ〜て、本日のメイン食材おにく〜〜〜♪

サエラ「美味しく焼くるんだぞ〜♪」

あ、そうだ。狼ちゃんにもご飯上げないと。
火を怖がってないみたい。やっぱり飼われてたのかな？

サエラ「狼ちゃん？これ食べる？」

お肉を差し出してみる。ん〜？食べない？狼って生で食べるんじゃないのかな、餌？

その眼がたき火と肉を交互に見ている。焼いたのが好きらしい。実はグルメか！

サエラ「ほいほい、焼いたのがいいのか〜。じゃ、一緒に焼いちゃうね！」

そうこうして、お肉を焼いているとなんだか真剣にお肉を見ている狼ちゃん。おなかが空いてるのかな？

狼ちゃん「ヴォウ！」

うわっ！何々！？え、早く肉を取れみたいにしてる？なんだろ？

取ってみると丁度いい焼き加減！この子、食べごろがわかるみたい！かしこいなぁ〜。それとも野生の本能って奴なのかな？

サエラ「おお〜！すごいね、君！　次焼くのも教えてねぇ〜？」

これで美味しくお肉を食べられそう♪

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ルー「調理は終わったかや？」

二回目の焼肉中に、水浴びから、ルージュさんが戻ってきた。

サエラ「ちょうどいい感じですよ〜」

肉をひっくり返しながら

サエラ「水浴びで冷えたでしょ？もっとたき火の近くに寄って寄って！」

ルー「うむ、なかなかに寒かったが、水も清く良い心地じゃった」

いそいそとたき火に当たるルージュさん。さっぱりした顔をしている。

そうして、たき火で温まっていると、いつの間にかうとうとと船を漕ぎだした。

ルー「っとと、暖まってきたら、眠くなってきたのう……一足先に、我は眠るとしようかの……」

サエラ「はぁ〜い、了解ですよ」

今日は色々とあったから疲れるのもしょうがないよね。徹夜仕事も多い鍛冶屋の私はまだまだ大丈夫だけど、明日のことも考えると寝ておきたい。

サエラ「でも、誰かが火の番兼夜警をしてないとなので、途中で交代してもらっていいですか？」

ルー「うむ、任せておくのじゃ……」

そう言って、風邪の当たらない窪みの方へ移動するとすぐに寝てしまった。

火は意外と誰かが管理していないとすぐに消えてしまう。火が消えると野獣が近寄ってくるかもしれないから、野営中は絶やさない方がいいって故郷の街に武器を買いに来た冒険者が言っていた。だから、そういう時は交代で火の番をするんだって。

と、言っていると狼ちゃんが裾を引っ張る。

さっきみたいに一番美味しいタイミングらしい。

サエラ「あ、今が一番美味しいの？教えてくれてありがとね！」

火から降ろす。いい感じに焼けた美味しそうなステーキだ！ジュル…。おっとはしたない！

でも、

サエラ「いっただっきま〜す！」

この至福の時間！こっちに来てからほとんど美味しい物は食べてなかったけど、このお肉は美味しい！素晴らしいよ〜！頑張って逃げるおにくを狩った甲斐があったよ！ん〜♪

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真夜中近く、ルージュさんと交代して眠ることにする。たき火があっても冬の山。寒い寒い！
ちょっと、身を震わせていると狼ちゃんが寄ってきた。一緒に眠るらしい。あ、狼ちゃん温かい！気持ちいいなぁ〜…あったかいなぁ〜…もふもふ……ｚｚｚ

ルー「む、いかん……サエラ、わんころ、起きるのじゃ！」

突然ルージュさんの声が響き渡る！

サエラ「ふぇ！？えぇ！？なに！なに！なんですか！？」