「ここは……どこだろう」

意識が覚醒してきて、最初に感じたことはそれだった。



吹き渡る風が砂を巻き上げ、不快感に顔をしかめる。
起き上がろうとして、自分が寝転がっていたことに気づいた。
見通しのいい大地。けれど、緑の息吹をまるで感じない。見渡す限り視界に映るのはどこか物悲しい。
そして、全く見覚えがない。
思わず口をついた言葉が前述のものだった。

寝起きのいまいち働きの鈍い頭を捻り、地面にあぐらをかいたまま考える。
前日の夜は何をしていただろうか？

そして気づく。
昨夜の記憶がない。
それどころではなかった。
その前も、そのずっと前も思い出せない。
なにより、自分のことすら、思い出せなかった。

「え……？うそ、だろ。なんだ、これ」

半ば呆然と呟く。
焦りが湧いてきた。言いようの無い不安が押し寄せてくる。

そんなはずがない。一体なんだというんだ。何が起こった？どうしてこんなことに。

俺は……誰だ……？

何か自分についてわかるものがないか、縋る様に荷物を検める。
緊張と不安と焦りで震える手で。
落ち着いてなど居られなかった。



丁寧に手入れを施されていただろう、両手で扱うだろう無骨な大剣。
動きやすさを考えた、何のものかよくわからない漆黒の革の鎧。
今、砂埃にまみれ白っぽくなっている服は、上下共に黒。
小物入れに入っていた何の用途かわからない『道具だったもの』。
これは何故か粉々に砕けていて、ゴミにしかならなさそうだった。

ただ、何か擦れてはっきりとしないが文字らしきものがあった。

………ge

わからない。わからない。

それを見た瞬間。声が聞こえた気がした。

名を、呼ばれた気がした。

……ジ。と。

エ……ジ、と。

ひどく頭が痛んだ。
身体全体で吐き出すように、搾り出すように溜息を吐く。
どこかしっくりしないものの、自分の名のような気もする。
とにかく、誰でもいい。誰かに会いたかった。
わからないことは、わかる誰かに尋ねよう。

立ち上がり、大剣を背負い、歩き出す。
ひとまず、エイジと名乗ることにしようと、とりとめもないことを考えながら。

うぶめ(3204)の声が届いた：
うぶめ「いい加減初期装備じゃやってらんねーですわ」

ワーナー(3205)の声が届いた：
ワーナー「うるせえなあ、今回は、休みだ。休み！！！！！」

イグレット(3463)の声が届いた：
イグレット「うろうろうろ……」

アルワン(106)の声が届いた：
アルワン「新年あけまして今年もよろしくだ！ …この世界でオメデトウかどうかは、悩むとこだがな…」

ゴロウザ(2159)の声が届いた：
ゴロウザ「クソッタレの長耳ヤロウが！　いい加減姿を見せろって。」
ゴロウザ「このまンまじゃよゥ、俺が無差別に狩りするような悪者みてェじゃねェか。」

エイジ(2309)の声が届いた：
エイジ「どこだよ、此処……」