ENo.1152 フードの…

「あんのバカ野郎…っ！何で大事な所でぬけてんだ…！」

っちと舌打ちするとアオは苛立ちも露わにギリリと歯を鳴らした。

蜥蜴は昔からそうだ。
リルの事になると冷静でいられなくなる
結果何かしらのミスを犯してしまうのがザラにあるのだ。

「ま、俺もヒトの事言えねーか」

もしかしたら蜥蜴がアオを敵対視するのは同族嫌悪も混じっているのかもしれない。

「のんびり土産探してる場合じゃなかったか…」

つい先ほど、彼女と同じ髪の色をした珍しい花を土産に
世界通信社の人間に伝言を頼んだ所だった。

伝言内容があまりにも気恥ずかしい内容だったので
アカとの“感覚”を切っていたが
改めて繋ぎ直す。

“ん…？にいちゃんどしたの？用事終わったの？”
“おう、終わった。そっちは変わり…ないようだな”
“感覚繋げば言わなくてもわかるしね…って…！”

…どうやら此方も此方でマズい事になったようだ

“誰だ！！言霊＜タマ＞呼びしたの！！！”
“兄ちゃんじゃないの！？僕じゃないし！！”

アカとアオどちらでもないのなら、思い当たる人物が一人だけいる。
…いや一匹か？

アオは目を閉じると意識を移動した。
幸い、まだ意識の移動は円滑に進むようだ。

（俺の時間は、まだもう少しあるな）

ゆっくりと目を開けるとそこには、こちらに背を向けた弟がいた
弟の先には二体の敵。

「兄ちゃん、もうこれ逃げていい？メンドクサイ」
「そう言いたくなる気持ちはわからんでもない」

“ほらほら〜早くしないと時間切れになっちゃうわよ〜”

不意に何処からか艶めかしい女の声が聞こえた

「やっぱ」
「お前か」

兄弟は盛大にため息をつくと陰鬱な表情で顔を見合わせた。

“時間切れになったらあ〜、アタシが相手しないと駄目なんだからね〜”

「面白がって敵を呼び寄せた奴の…」
「台詞じゃないよ…ねっ！！！」

向かってきた女賊をスレスレに避け、女賊の背中を踏み台にし
もう一方の敵、マンモスに向かって強靭な鳥足を繰り出した