私は一人になれている。少なくともそう思っているし、他人よりも明らかに単独行動が多いと思う。華美装剣士内でもなんだかよくわからない派閥だったりグループだったりはあった。あいまいな表現になるのはそれらを思いっきり煙たがって(認めているようなそぶりだけは見せつつ)深入りしなかった上、それらについて話すような間柄の人間も居なかったから。 　それでも私の周りには数多くの人が居て、それぞれ一人一人に名前があり個性がありまぁそれくらいは結構覚えている。相手の顔をこちらが知らなくても相手はこちらの顔を知っている事も多く、顔見知りだけは勝手に増えて行った。その内片手の指で数えられるくらいしか、顔見知り以上の者にはならなかったけど。 　ここは海の世界、シーナが母船をロストしてから数日が経った。妖精さんによる解析は明らかに精度が悪く、途方もない範囲に『落ちた可能性』があるとかなんとか。元々母船のサポートあっての存在である、数少ない手掛かりに文句を言う訳にもいかない。 直接暗号を飛ばしてサーチを掛けようにも圧倒的エネルギー不足、記録用のスフィアと妖精さんの板のどちらかを失っても船を見つけられる確率が著しく(既に絶望的とはいえ)落ちるだろうからせいぜい日に一度スフィアと暗号を飛ばして数分程度強力受信を掛けておしまいだ。収穫は今のところ皆無。 せめて母船のある方角だけでも特定出来ればと色々模索してみたが、何分落ちたのが海である。スフィアの映像を解析してもまぁ映ってるのは全方位海だったよね。落ちたのがここらへん(広い)、落下速度と角度を推定してこっからここまでは落ちてる可能性がある(間違ってるかもしれない、さらに広い)、目印は何もないです(通信は不通)。すがる藁すら浮いちゃいねえ現実。 　昨日はおっさんに恥をかかされて頭にも顔にも血が上ったシーナだったが、考えてみれば船にばっかり気を取られていて自分の装備についてすっかり備えを忘れていた。申し訳程度に防水かけるだけなんてらしくない。ガジェットを整える事に関しては持って生まれた華美装剣士の適正以外の物を備えているのだからそれを活かさない手はない。 ともあれ、あのおっさんと今度組んだらただじゃおかない……具体的にどうするかはまた今度考えようと決めた。そんなことより今は目の前の面妖な生き物とこれまた面妖な連れ合いとを何とかしよう。 　今度組んだのは二人、両方人かというと凄い疑問符の残る感じだった。以下シーナの感想。一人は極彩色のえっらい派手派手しい少女、なんか見てると目がちかちかする感じだったのでシーナ的には後ろに居てくれて助かる。下手に前に出てこられるより考える事が少なくなって良い。横に並んだもう一人は、うん、鎧。移動の仕方が圧巻、中身の性別は女性っぽいけど人間じゃないと思う。戦闘となるとかなりエグイことを言ってたし敵対したくないなぁ、海の底で氷像アートとかお洒落すぎてついていけない。 　なんてことを考えながらマイケルよりはなんか人間っぽくなってより気持ち悪さの増した生き物を軽快に叩きのめした。海中かつ支援無しの割には上々だろうか。軽はずみによしゃ！と声を出しそうになって踏み止まる。華美装剣士はこの程度で感情を揺らさない。結局、気さくなおっさんみたいになんだかんだ騒ぐことなく無事終わってしまった。 　……明日から頑張ろうとシーナは思った。一朝一夕で心強い仲間など得られるものではない。 　宿に帰りついて、ぱたりとベッドに倒れ込む。 「つっかれたー……ミコト、お菓子」 いつもの拍子で、今は居ないものの名前を呼ぶ。両隣にはまだ誰も帰っていないらしく、ふっと音が落ちたような錯覚を得る。私はほんとうにひとりに、なれている？応えるものはない

シーナはアイテムNo.3 テリワカメ を使用した。

EXPが3上がった！

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

ここ、最先端探索拠点を越えてしまえば、そこはもう未開の海だ。
シーナ達のような探索者たちがどんどん先へ進めば、
後々海底探索協会が、このような拠点を設けていくのだろう。

この先はどんな危険が待ち受けていても不思議ではない。
誰も踏み入れたことのない場所なのだ。
準備を怠らず、慎重に進むといい。

どのような生き物が居るのか、どのような未知が、はたまた宝が眠っているのか。
それはこの先へ自ら進んでいく者にしかわからないのだろう。

海は、まだまだ先へと広がっている。