「で、あるからして・・・聞いてますか？」 いつの間にかけたのか眼鏡を直しながらマダラがこちらの方を ちらりと見る。 「あー・・・こいつ、まずは恰好から入るタイプだなぁ・・・」 心の声のはずが小声でつい出てしまった。 「何か言いましたか？」 蛍光灯の光を無駄に反射させながらマダラは睨みつけてくる。 「いいえ、何も・・・どうぞ続けてください」 「よろしい。では続けさせていただきます。そもそも『正義』とは・・・ この調子でかれこれ2時間ほど 『正義とは何ぞや』 『悪とは何ぞや』 について部屋の中を歩き回りながら 二足歩行する猫が講義を続けている。 「・・・であるらして、そもそも『正義』という概念自体、個々人によって異なるものであって・・・ なんだろう・・・このフレーズさっきも聞いたような気がする。 気のせいかな？ よく思い出せない。 「それぞれの掲げる『正義』がぶつかることでのみ争いが・・・」 そもそもの発端は 「悪の組織の配下の魔法少女ってところが、どうにも引っかかるのよねぇ・・・」 この一言だった。 やはり『魔法少女』たるもの『正義』であるべき。 そんな気持ちをちょっとこぼしただけだったのだが 「そんな事を言うとは嘆かわしい！！」 マダラは突然大きな声を出すと熱く熱く語りだした。 そして今も語っている。 「ちょっとお水頂いても良いですか？」 まだ語るつもりらしい・・・ 重い足取りでキッチンから水を取ってくる。 水を一口飲んで調子を整えると 「では、続けさせて頂きます。」 また語りだした。 これはある種の『洗脳』？ 相手の思考を停止させる手段？ 深夜の通販番組が延々と同じ内容を垂れ流してるのと 同じ効果なんじゃないか？ そんな気がしてくる。 そう言えば友達が言ってたなぁ・・・ 「深夜の通販番組見てるとさぁ、なんかすごい商品に見えてくるから不思議だよねぇ」 まぁ、本人が納得して買う分には良いんですけどね。 大概、商品を手に取ってから後悔するんだ。 ん？ 私もこのまま行くと 『魔法少女』を始めてから後悔することになるんじゃ・・・？ ぼんやりと考えながら猫モドキの話を聞き流していると 「まぁ、根本的な話で言いますと お妹様が手にしているのは我が組織の『ヒーロー部門』の物ですから ご安心していただきたいですな。」 聞き間違い？ 「何よ・・・その『ヒーロー部門』って？」 「あぁ。ご安心ください。もちろんヒロインの方もちゃんとカバーしております」 「いや、そういう事じゃなくて。悪の組織に『ヒーロー部門』っておかしくない？」 「ですから、我が組織を『悪の組織』と決めつけないでいただきたいですな！ 群雄割拠する対立組織の勢力拡大を阻止するべくヒーローを出動させているのです！ 日夜市民の平和を守るために努力している彼らも我が組織の一員なのです！」 えーと・・・ 群雄割拠する悪の組織がある。 それぞれが勢力を拡大したいと思っている。 それを妨害するヒーローを派遣している？ ・・・それってお互いにって事？ 「ですから、先ほどから申し上げているではないですか！ 『正義』なんて物は個々人の価値観でしかないのです。 存在する組織の数だけ『正義』もまた存在し それぞれの掲げる『正義』が相いれない場合に紛争となるのです」 「・・・よく分かんなくなってきた」 「あちら目線からしたら、我々は『悪の組織』で お妹様は悪の幹部みたいなものでしょうねぇ。 しかし、こちら目線です！そこ大事！」 あちらとか、こちらとか・・・ そろそろいい加減になってきたな。 「我々の掲げる『正義』の下に『魔法少女』として ぜひ！活躍していただきたい！」 とりあえず 『魔法少女』をやってみよう。 うん。 それできっと、この胸のモヤモヤした感じの答えが出る。 そう信じたい。 あれなのかな・・・ 『ナンチャラ戦隊』とかの秘密基地って 実は悪の組織の秘密基地も兼ねてて 司令官って実は悪の大幹部だったりしたのかな？ 夢の舞台裏ってこんな物なの？ でもなぁ 世界を何個か消し飛ばして封印されてるって存在。 どう考えても『正義』って感じじゃないよねぁ・・・

ロズはアイテムNo.3 焼き魚 を使用した。

敏捷が3上がった！

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

ここ、最先端探索拠点を越えてしまえば、そこはもう未開の海だ。
ロズ達のような探索者たちがどんどん先へ進めば、
後々海底探索協会が、このような拠点を設けていくのだろう。

この先はどんな危険が待ち受けていても不思議ではない。
誰も踏み入れたことのない場所なのだ。
準備を怠らず、慎重に進むといい。

どのような生き物が居るのか、どのような未知が、はたまた宝が眠っているのか。
それはこの先へ自ら進んでいく者にしかわからないのだろう。

海は、まだまだ先へと広がっている。