「ウム、やはり海というものは美しいな」 立派な口髭を揺らし、伯爵は目を輝かせる。その視線の先が海ではない別方向に向いている気がするのはなぜだろうか。 「……スケb」 「それ以上言わないのが礼儀ですよ」 文月もそこには気付いたようで、何かを言おうとしていたが引き止めることにした。 光輝く太陽、綺麗で穏やかな海、そして水着の若者たち——見る者が見れば心躍る光景であることは違いないだろう。 しかし、個人的には何の感慨もわかない。もとより生まれは港町。見つかる生物たちはみな見覚えあるものばかりで、感性を全く刺激してくれないのだ。 「……どうしましょうかね、これ」 パラソルの影でメモを開きつついろいろと書き記しては見たが、どれもこれも面白みに欠ける。ネタになりそうもない……。 「……はぁ」 何度目かのため息を吐く。それと同時に服の裾が引っ張られた。見ると、文月が退屈そうな顔でこちらを見つめている。少し日に焼けたのか、白い肌は全体的に赤みを帯びていた。 「どうかしましたか？　コーヒーでも飲みます？」 「……飽きた。もっかい遺跡行きてぇ」 「では行きましょうか。準備は万全で？」 どうやら退屈していたのは私だけではなかったようだ。立ち上がり、二人でずぶずぶと沖合に沈んでいく。 「待って、何で私は毎度置いていかれるのかな？ 老人に対する労りとかないのかね君たちはぁ！　ちょっと、着替えるから待って。お願いだ！　置いていくなぁぁ……」 時は夕刻。人の少なくなった海岸でカラスの鳴き声と伯爵の叫びとが合わさり、絶妙なハーモニーを醸し出していた。

LeonはアイテムNo.14 SSシェルボックス（低） を使用した。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

Leonは、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。