【第1日】 「右ストレートでぶっ飛ばす・・・ 　まっすぐ行ってぶっ飛ばす・・・ 　右ストレートでぶっ飛ばす・・・ 　まっすぐ行ってぶっ飛ばす・・・」 豚魚というかオーク族は巨漢はもちろん見た目よりも筋肉が多いため、 まともにぶつかればこっちがぶっ飛ばされるだろう。 だがこの素子、真面目に戦ったことなど一つもないのだ。 まぁ、鍛えてるとはいえ一般人だから当然である。 そのため、力を見せてもらおうと言われても正直困るのである。 どう考えても無理だろう、こりゃダメかもしれないという焦りが、 好きなマンガの名台詞をぶつぶつとつぶやくという状態を引き起こした。 「んがー！！　考えてもしょうがない！！ こういう時、おかあさんだったらまず当たって砕けろを実践してたし！！」 素子は覚悟を決めた。 ・・・はいいがせめて武器らしいものがあればよかったのに、と思っていた。 自分の水着の代わりにあの水着が入っていたのだから、 そういうことがあってもいいじゃない、と。 受付のお姉さんに渡されたものはよくわからない石で、 これが酸素ボンベの代わりになるみたいなことを言ってたので、 武器として使うことはできないし・・・どうすれば？！ ・・・みたいなことを頭の中で考えながら考えてた時。 「あ、とりあえずこれなら何とかなりそうかも」 と、ふと素子の視界に映ったのは地面に落ちているバットに使えそうな木の枝。 所々ねじれがあって、樹齢結構ありそうな雰囲気を醸し出しており、 硬さもなかなかのもののようだ。 すぐにそれを拾い上げ、両手で持って構える。 「行くぞ！　鍛え抜かれた肉体の一撃！！」 叫びとともに豚魚が突進をしてくる。 流石は下半身が魚なだけあって水中は恐ろしく速い。 当然素子では躱しきれるはずもなく。 「ぎゃふん！！」 陸地だったら結構吹っ飛んでいたであろう突進で思いっきり仰け反る素子。 それでも痛みをこらえて立ち直り、と負けじと突撃を仕掛ける。 「とりあえず・・・まっすぐ行って、ぶっ飛ばす！！」 水の中なので振り回すのは無理と判断した素子は、 槍のように構えてそのままぶつかるように・・・。 「ぬお！　予想外の衝撃が、なかなかやるではないか」 「・・・え？」 豚魚の言葉に戸惑いを覚える素子。 予想外の衝撃と言った豚魚の身体にしっかりと痣ができている。 ヘビー級ボクサーのKOパンチをはるかに超えるレベルに見える。 「なんで？　どうして？」 抵抗が強い水の中で、あそこまででかい痣ができているのにも驚いたが、 とりあえず、よくわからないけど戦うことは出来るという、 根拠のない確信が素子に芽生えたのである。 「これで何とかなりそう、とりあえず大事に持っておこう。 あとはどうやって勝つか・・・ってあらら？」 次の攻撃をどうしようか悩んでいると、豚魚の様子がおかしい。 何やら苦しそうに悶えているが、 それが酸欠によるものであると理解するのに時間はかからなかった。 豚魚が水から上がった、どうやらこれで終了らしく素子はホッと一息。 スキルストーンと言われる石は、酸素ボンベとしてだけでなく、 封じられた効果を使うためのバッテリーとしての意味も持つらしく、 チューンジェムは能力強化のメリットを持つ代償として、 石に充填してあるパワーの消費が多くなる、と教えられた。 つまり、この戦いで最も大事なことを身体を張って教えてくれたということだ。 他にもいろいろと説明を受け、 ようやくだいたいのことは理解できるようになった。 あとは実際に行動して学ぶように言われ、今日のところは終了。 体力に自信のある素子だったが、心身ともに疲労困憊だった。 まぁこれは無理もないだろう。 「・・・そういえば・・・寝るとこどうしよう・・・」 せめて雨風を凌げるようなところが無いととてもやっていけない。 洞窟を探すかあるいは頑張ってほったて小屋を作るか・・・。 「今日はもうヘトヘトだし・・・晴れてるから明日にしよう・・・」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　To be continued...

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

バカンス

青く輝く海ッ！
申し訳程度に残った陸地の真っ白い砂浜ッ！
キンキンキラキラと照りつける太陽ッ！！！

そう、ここはバカンスにピッタリ夢の世界、テリメイン！
水着の美男美女ッ！
トロピカルな熱帯魚と珊瑚礁ッ！

さあ心ゆくまで羽を伸ばし、
この穏やかなる海セルリアンを全力で堪能するのだッ！

しかし注意せよッ！　穏やかな海域とはいえ、未知なる生物が居ないとも限らないッ！
そんな障害なんぞ乗り越え、全力でバカンス出来る、
素子のユートピアを今こそ探し出すのだッ！