揺られる手足、なびく髪。動くことが許された私は、この世界を少しずつ歩いてみることにした。尾と言う感触にはまだ慣れないところですが、これはこれで気持ちがよいものです。オフィスで背中を伸ばしていた時期が懐かしい...とはいっても、もうしばらくは叶いそうもないですが。 形成を初めてから、だいぶ形が整ってきたように思える。身体の動きもしなやかになってきた。おとと、次の情報を貰いに行かないといけませんね。 ——————————————— 「ったく、いつまで待たせる気かと思ったらようやく来たか。おせーよヨツバちゃん、それとも...クリュウちゃんの方がお前にはお似合いか？」 もう、そんなこと言わないでくださいよー。ようやく動けるようになったと思えば、待ち合わせ場所がこんなに遠いんですから。もう少し、気を使ってくれません？ ああ、そうですね。私の事は、「クリュウさん」でお願いします。四葉は...もう、いませんしね？とは言っても、私の名前は「ヨツバ」のままで認識されてたみたいですが。 「なんで俺が気ぃつかわなきゃいけねえわけ？別にこれくらい、どうってことねえだろ。てめーこそ、ちったあ俺に合わせろや。まあいい...で、クリュウちゃんで呼べばいいんだな。それくらいは合わせてやるよ。俺って、ちょー優しいからなあ？」 あはは、ありがとうございます。それから、本題に入りたいのですが...これから私、どうしましょう？形成も済みましたし、もう動けるようにもなりました。戦いは...あんまり得意じゃないんですけどねえ。いったいここがどこなのか、どこに何があるかも分かりませんし。 「この世界はガキやお前がいた世界とは少し違った世界だな。まあ、別次元の事象とでも思ってくれや。戻る方法はいくらでもあるが、お前には「門」を探してもらおうと思う。」 「門」...ですか？この世界にも「あの子」の力が働くほど強力なものとは思いませんでしたが...。 「別に、誰もが見て分かるほどの物じゃねえよ。俺の力と同じさ、「精神干渉」の初歩の初歩だ。お前に探してもらう「門」っつーのは...ガキの意識に侵入できる力を手に入れて来いっつーことだ。誰かを自分の意識に受け入れる「共有門」...それは誰にだってあるものさ。俺にだって、お前にだってあるものだ。お前の最終的な目標は単純だ、その門をくぐって、ガキへの精神干渉をして「元の世界に帰って来い」それだけだな」 はあ...あんまり難しくなさそうですが。それで、その力はどこで貰って来ればいいんですか？あんまり教えてくれないと、勝手に推測して行動しちゃいますよ？ 「別に勝手に行動してくれるんなら、俺はそれでも構わねえけど？適当に寄り道してくれても別にいいぜ。つっても、それなりの行き先には行ってもらうけどよ。 遺跡だ、この先に行ったところに遺跡がある。人の気配もするし、他人と干渉するのがいいだろ。そっちの方がお前にも都合がいいだろうしよ。」 ふむ...分かりました。まだ、貴方としかお喋りできてませんしね。そろそろ違う人と喋ってみたいものです、ああ！別に貴方の事が嫌いとか飽きたわけじゃないですよ？あはは。 「適当な事いってんじゃねえよ、それよりさっさと行って来い。お喋りが過ぎんだよ、じゃあな」 —————————————————— 身体を揺らめかせ、私は動いていく。彼に教わった通り、遺跡へと身体を向けて動いていく。誰もが持っている、「他人を受け入れる心の扉」ですか。自分を自分、他人を他人として「認識」する以上、誰かを傷つけてしまうのが生き物というもの。しかし...「自分」を認識してしまうほど、誰かにつける傷は深くなってしまう。それを緩和するのが、「受け入れる力」。他人を他人として、その人を「その人」だと認識し、「自分の心の中」に受け入れることで他者との共感ができる。 私は信じるといった言葉があまり好きではない。人は疑うべきだ、疑うことによってようやく、「その人」と言うものを「知ること」ができる。信じるというのは、私にとっては...「知ることの放棄」、つまり無関心ということ。疑い、考え、「無い物」を考察する。もしかしたら、もしかしたらといった可能性を見出そうとする「人への興味」こそが、他人を受け入れようとすることだと私は言いたい。ああ、私は心理学者じゃないんですけどね。アカメさんと話をすると、心理学にも手を出したくなりますよ。 —————————————————— そうして、私は遺跡の近くまでたどり着いた。人の気配がする...とは聞いたものの、私は辺りを見回しても誰もいないように見えた。本当に居るのかすら疑問に思い、もう少し周辺を探す事にした。 ふと、誰かが見えた。どうやら子供の...イルカか何かでしょうか？人がいるといっても、彼一人のようだ。彼か、彼女かは分からないが、居る事は確かだった。私は早速、彼に近づいて「私」を認識してもらう事にした。 仲良くなれるといいですが、彼はいったいどんな人なのでしょう？これは...「興味」が尽きませんね。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。