———こぽ。 しん、と沈んだ世界に音が一つ響いた。 空が夜に代わる色、暗い青の世界。 小さな泡が一つ。 自分の身体はいまどうなっているのだろうか。 もう身体を動かす力も残っていない。 少し、少しだけなら動かせるはず。ぴくりと指先を動かしてみたけれど・・・もう動いているか動いていないかもわからなかった。 ここは・・・ 辺りに視線を這わす。 青黒い闇が幾重にも纏わりつき、果ては一向に見えない。 たまにきらりと光る何かは、ただの魚だろうか。それとも私が力尽きるのを待つナニカ。 ただ一方向、上だけはわかる。水面はもう見えない。だけど、ぼんやりと明るい方向。 ———それは私の沈む、その反対。 ここは、海の底・・・とは程遠い。 ただ、ただ、沈んでいくだけの私の身体。 背中に何かが当たる感触などはなく。 人の身体が海で浮くなんて、嘘っぱちだった。知りたくなかった、こんなこと。 重力に引かれて、それとも重力じゃないナニカに引かれて。私の身体は潜って行く。 どこまで行くのか。それまで私は起きているのか。 私は一体どうなるのか。もう助からないと思いつつも、その後は？ 私の意識がまだあるのも不思議だ。初めは私の口から出て行っていた、命が、泡が、出なくなったのも大分前。 今のもきっと、最期の泡。 ぼやけている視界の中、膨らんで上がっていく泡を何かできることもなく眺める。 泡が昇っていく。 膨れていく。 だけど、際限なく大きくはなっていない。 遠ざかっていく。 だから、小さくなっていく。 大きくなって、小さくなって 昇っていく。 昇っていく。 昇っていく・・・。 どんどん遠ざかっている泡が。ふと、割れた。 ぷかりと二つに。 別たれた泡は片方だけが大きく横に揺れた。 否、それは揺れるだけではなかった。 大きく、小さく。それは伸縮するように輪郭を動かしながら。ゆっくりとしかし確実に大きなっていく。 ここに至って、気付いた。 “それ”は泡ではなく。そして、私に近付いてきているのだと。 次第に露わになる輪郭。 “それ”は、それだけはぼやけた視界の中、くっきりと存在していた。 ゆったりと膨らんだり縮んだりする大きな円。 ぼんやりとした明かりを透かして放つ輝きは次々と移り変わっている。 円の下から延びる無数のひらひらは太いものから細いものまで数えきれない。 ゆらりゆらりと揺蕩いながら、虹色に輝く。 きっと“あれ”は自分を終わらせるナニカなのだろう。 そうと考えながら私は、大きくなっていく“それ”をじっと見つめていた。 丸く輝くそれは昏闇にひっそりと浮かぶ満月のようで 単純化した思考の中で、ただただ ————きれい。 そう思った。 自分の終りがようやく見えて、安堵したかのように少女は遂に意識を手放した。 ——————————————————

	ミヅキ
	「今のは・・・？」

少女・ミヅキは呟いた。 未開の世界、テリメイン。 そこで生まれた少女だが、ほとんど海だということくらいしか知らない。 だからこそ、家を出た少女はとりあえず探索者になろうと思ったのだが・・・。 眼前には、顔を真っ赤にして空気を求めて浮上する豚面の人魚の姿があった。 どうやら、話の流れからすると探索者協会の教官のようだ。

	ミヅキ
	「まあ、私が強すぎるのね。だってくらげだもの。」

少女はことりとしばらく首を傾げていたが、すぐにそう結論付けた。 陸に上がるとそこには受付の人魚と豚面の人魚が少女を待ち受けていた。 どうやら今ので合格らしい。 次は一体どうしようか。 とりあえず探索者の資格を取ろうと思っただけで、その後は特に何も考えてはいない。 ひとまず、潮の流れに身を任せればいいかと思う。 だって——————“くらげ”ってそういうもの。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

バカンス

青く輝く海ッ！
申し訳程度に残った陸地の真っ白い砂浜ッ！
キンキンキラキラと照りつける太陽ッ！！！

そう、ここはバカンスにピッタリ夢の世界、テリメイン！
水着の美男美女ッ！
トロピカルな熱帯魚と珊瑚礁ッ！

さあ心ゆくまで羽を伸ばし、
この穏やかなる海セルリアンを全力で堪能するのだッ！

しかし注意せよッ！　穏やかな海域とはいえ、未知なる生物が居ないとも限らないッ！
そんな障害なんぞ乗り越え、全力でバカンス出来る、
ミヅキのユートピアを今こそ探し出すのだッ！

暖かな海、緩やかな潮の流れ、色とりどりの魚たちッ！
まだまだこの海は、バカンス出来る場所がありそうだッ！

ミヅキは周辺を探索…………。

海ブドウを手に入れた！

ミヅキはSSシェルボックス(低)を購入した。

ミヅキはSSシェルボックス(低)を購入した。

ミヅキは精神を訓練した。
ミヅキは魔力を訓練した。

目的の決定