自室にけたたましく鳴り響く会社用端末を手に取り、 ガズエットは目をこすりながら電話に出た。 「あい～、ロブ・クレープテリメイン店、ガズエットでーす」 「ちょ、ちょ、ちょ、ガズくん？ねえなに考えてんの？ 店舗名はそれで正しいんだよ。 え、わかってんだよね」 「ん？はい」 「なんで違う名前で探索者登録してんの？ ね？してるらしいね？本社まで問い合わせ来てるよ？ 『コスい』ってなんだって」 「あー……」 そういえば。 さして切迫した様子もなく、ガズエットは自室の天井を仰いだ。 携帯を持った手のもう一方の手に握られたくしゃくしゃのティッシュペーパーをゴミ箱になげつける。 それから、焦りが伝わってくる上司の声色に、あくび混じりに返事をする。 「手が滑りました」 「どこをどう滑ったらあの名前で登録しちゃうの！ 変換候補とかで出た～みたいな感じ？間違えようがないよね？ ロブ・クレープテリメイン店だからね？ だめでしょ～～～まずいって。どうすんの。 え、そっちにどのくらいの期間いるって話だったっけ」 「まあ売れ行き次第ですけど、一年くらい？」 「うーわ、長いなあ。その間ずっとそれで？」 「これですね」 「も～～～～～～せめて本名！100歩譲って！ なに、コスいって……そんなんさあ、 クレープ屋さんがぼったくりみたいなイメージついちゃうでしょ！ね！ 誰もこないよ！そんな怪しい飲食店！」 マイクをミュートにして笑うガズエット。 「名前、どうにかして変えられないの？」 「当分無理ですね」 「もう……しょうがないな……なんか、逆に宣伝に使えるとか……いや、 今のSNS社会では広報に結構なセンスが必要になってくるし…… ヘタこくとバッシングの嵐だし？ なに、もう……『コスい』って……活用しようがなくない？ あんま聞かない言葉だから僕、ネットで調べたんだけどね？ 『ずるい。わるがしこい。けちけちしている』 ってさあ、ね！これ、サービス業にあるまじきワードじゃない？」 「私もそう思います」 「はあーーー。まあなんか無理なりに策を考えとくけどさあ」 「はい。では失礼します」 「え、え、ちょちょちょ、あのねえガズくん？ 今の今まで君から謝罪の言葉一言もないんだけど」 「そうですね」 「申し訳ないと思わないの？」 「サーセ(ン)」 「短い謝罪だね…… あのさ……ないってこと？　ごめんなさいの気持ち」 マイクをミュートにして笑うガズエット。 「ないかあ……」 「ッ……ふっ、 いいじゃないですか、現時点で結構お客さんきてますよ」 「マジ」 「マジです」 「じゃあ、うーん、なんとか言い訳が立つかなあ。接客がんばってね？ お客様に無礼なこと、しないようにね！」 「はい。失礼し」 「最後まで言い終わってから切ってくれないかなあ」 「ウラベさん、ガズくんやっぱだめじゃないですか？」 「ううん……でもねえ、あの子ほんとは、悪い子じゃないと思うんだけどねえ」 「それ本気で言ってます？」 「……うーん。はあ、困ったね」 -------------------------------------------------- 1日目　22:06 あいつの妙なお人よし感は本当に気持ち悪い。 よっぽど恵まれた環境で育ったんだろうって話すたびに思う。 本部の部下たちにもナメられる一方かなり愛されてるし、 あの人の周りはいつも心底楽しそうな笑顔ばかりだ。 俺がどんなに努力しても絶対手に入らないものをあの人は持ってる。 俺だって人とああいう風に他人と暖かく触れ合いたい人生だったわ。 オッサンだけど妻子持ちのイケメンだし背高いし腹立つわ。 生の喜びを知りやがって。ほんと世の中不平等だな。 むかつく。つまんねー。 変な店舗名で登録しておけば客が来ないだろうと思ったけど、そこそこ来てるし。 ハロウィン（笑）とかいうウェイ系リア充と行動力のあるキモオタと企業しか楽しめないイベントのために女装させられるし。 どうせクリスマスはミニスカサンタでしょこの流れだと。はー。 もうやだ。イベントを自分の都合のために純粋に楽しめる人類め。 っていうかオタクのくせにウェーイってできるやつが一番嫌いだわ。 あー、クリスマスのこと考えるだけで頭痛くなってきた。 その後はバレンタインもあるでしょ。 嫌すぎる……　つらい

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

——辺りは穏やかな潮の流れと、ちらほら入る光で暖かい。
まだまだ遺跡は先へ続いている……。

ガズエットは周辺を探索…………。

酢の物を手に入れた！

ガズエットはビート板を購入した。

ガズエットはバタフライを購入した。

ガズエットはTGシェルボックス(低)を購入した。

ガズエットはTGシェルボックス(低)を購入した。

ガズエットはゴーグルを購入した。

ガズエットは敏捷を訓練した。
ガズエットは器用を訓練した。
ガズエットは精神を訓練した。
ガズエットは精神を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
ガズエットは器用を訓練した。

目的の決定