無事に試験に合格した私は、晴れて穏やかな海《セルリアン》に漕ぎ出す資格を得ることができた。スキルストーンを用いた初めての海中戦闘で、得られた教訓は多々あるけれど、特に大きいのはチューンジェムの詳細な扱い方。戦闘中に何度も用いるスキルを無闇に重たく改造すると、空気の補充に支障を来してしまう。人魚である教官が身をもって実演してくれたのだから、今後の方針に活かさないとね。 ////////////

自動人魚《オートマーメイド》である私は人間のように窒息することはないけれど、海中で浮力を維持するためにどうしても空気が必要だ。金属製の人形が海中で行動すること自体が結構な無茶で、天才的な人形技師である母様も妥協せざるを得なかった。幸いにして息継ぎ用のスキルは早期に確保できたので、当面の間は困ることは無いだろう。 ////////////

今回の私達の目的は2つあって、1つは海中遺跡の探索だ。遺跡に関しては協会にほど近い海域ということもあり、目ぼしい品は粗方盗掘され尽くした後だと思う。どちらかと言えば、私達《ブラズニル》の海中探索訓練という意味合いが大きい。無制限に海中にいられる代わり非力なリーサちゃん。戦闘に秀でるが空気切れが命に関わるオリヴィア。特性の違う3人、上手く補い合える態勢を整えないとね。 ////////////

そしてもう1つが(自称)暗黒皇帝である、まじかる☆リオぴー御一行との決闘よ！お互いに海中戦闘は初心者同士、どんな展開になるかは想像もつかないけれど、勝っても負けても良い教訓を得られるような、良い試合にしたいわね。互いの力と技と戦術をぶつけ合う決闘は、異世界人との交流に欠かせないって母様が言ってた！ ////////////

そして更にその次、暗黒皇帝御一行の次に戦う相手も決めた。今度の相手は探索者番号1108のカルサイトさん。出る所は出て引っ込む所は引っ込んだ、色っぽい石像のお姉さんだ。石の身体でどうやって海中に浮かんでいるのかは大いに気になる所だけど、この辺りに関しては私も人のことは言えないわね……。 今回は、ここまで。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。