セアは人魚というものを見たことがなかった。 　聖書に描かれた姿をいくら眺めても、人が口々にそれを崇めるのを聞いても、その存在はセアの中でまったく現実感をもっていなかった。 　 　 「あら、あなたも《テリメイン》の探索希望の方？　ようこそ、《海底探索協会》へ」 　だから実際にそれが、しかもまったく予想もせぬうちに目の前に現れた時の驚きといったら、セアの持つ回らぬ口で語ればゆうに一日はかかるだろうと思えるほどだった。 　翠の瞳は真ん丸に見開かれて、まさに眼前にいる桃色の髪をした人魚を穴が空くほど見つめていた。その顔の横側から生えた魚のひれのような耳、机の下から覗く何よりの人魚の証である尾びれ。そこを幾度も視線がなぞり、それでもなお信じられないとばかり数度の瞬きを繰り返す。 　笑みこそ崩さないものの見つめられる彼女も惑ったのだろう。ひとまず注目を逸らそうと、あるいは己の職務を果たそうと、「どうぞ」と一声とともにスキルストーン、そして協会の申込書を差し出した。 　それさえ目に入らぬ様子のセアがようやく正気を取り戻したのは、痺れを切らした後続の志望者が、その前に立ち尽くす小さな身体を押し退けてからである。 　 　 　架空であっても存在を知っていた人魚というものに対してさえそうだったのだから、はなから考えた事もない未知のもの——マリンオークと初めて相対した時など、セアが言葉を失っていたのは言うまでもない。 　おそらくはそのような反応を示した探索希望者は一人ではなかったのだろう。かの教官はその武骨そうな顔立ちとは裏腹に、目の前の子供の心中を慮るような様子さえ見せてくれた。 　けれどだからといって手を抜かぬからこそ、彼は教官という地位にあるのだろう——とまで思い至るほどには、この無表情な子供は人の機微や築かれた組織の内情、各人の立場や求められる資質というものに通じてはいなかった。 　この見たことのない生き物も、目の前にいる子供という生き物は何かと怖がるものであるという認識や、自分はそういうものを気遣ってやらねばならないという思いを持っている。これまで見てきた、「穏やかで規範的な大人」というものと同じルールで動いている。 　その翠目にはそのことばかりが映っていて、その思考はそればかりを不思議がっていた。目の前にあるまったくの未知がよく見知ったものと同じように動くことが、セアにとっては何よりも奇妙なことだった。 　 　 　そして息を切らした教官が水面へ顔を出した頃、セアはといえばその顔にやや拍子抜けの色を浮かべていた。まだその身は水中にあって、当の教官本人から見えないであろう事だけが救いである。 　審査を終えたと告げられても、探索者の一員として認められても、その旅路への祝福を受けてもその言葉は小さな耳に入らず、ただ上の空のまま、セアは人魚とは何なのか考えていた。 　かつて彼を拾い上げた場所で、それは疑うべくもなく神の使いであった。魚の半身にて神たる海そのものに親しみ、人の半身にてその言葉を人へ伝える伝達者。他の島々へと渡るための海路を教え、教会に伝わる数々の美しい歌曲を紡ぎ出し、木々と鉱物の貴重な群島諸国に『消えざる火』を授けた、様々なる叡智と奇蹟のもたらし手。 　けれどテリメインの人魚とは、恐らくそういうものではないのだろう。人のように当たり前にそこにいて話し笑う人魚と、魚の半身を持ちながらも水の中で息をすることも叶わぬマリンオークは、少なくとも今まで教わってきたものとは天地ほどの差がある存在だ。 　セアは神の使いの存在を信じていなかった。けれど神の使いでない人魚というものがこの世にあることなど、これまで生きてきた、そして記憶を保っていたほんの数年の間には考えた事もなかった。そしてそのあまりに短い人生経験に、この海域に着いてより次々と襲い来る想定外を処理する支えとなるほどの厚みはさしてない。 　これまでならばきっと、誰かを探し言葉少なにでも相談するという手を取っただろう。セアは決して社交的ではなかったが、そうすることの有効さは知っていた。むしろそうして他者というものに導かれ支えられ教えられてきたからこそ、こうしてひとりで何とか生きることのできる彼が今ここにいる。 　けれどその馴染んだ手段に頼るには、テリメインに来てからの時が足りなさすぎた。そして誰かも分からぬ人が、テリメインには溢れかえっていた。自然豊かなこの地に訪れた観光客、それを当て込みやって来た商人、元よりこの地に住まうテリメインの住人、そして海底を目指す探索者達。本当に同じ海の上にあるのかと疑いたくなるほどに様々な人種や種族の集うこの場所は、相談するに相応しい相手を探すことがまず最難関と見えた。 　 　 『当隊では、当該海域(テリメイン)に於いて【人魚】の情報を収集・整理し、必要とする冒険者に向けて公開します。 代表 アルカールカ海底騎士団第二十二小隊　キノイーグレンス・リーガレッセリー』 　その折に目に入ったのは、貼り出されたそんな張り紙である。見覚えのない文字がすらすらと頭に入ってくるスキルストーンの力の感触は何とも奇妙なものだったが、その情報はまさに渡りに船といってよかった。 　アルカールカ、海底騎士団。どれも耳馴染みはない単語だったが、むしろこのテリメインでは見覚えがあるようなものの方が珍しかった。 　まるで異界に紛れ込んだかのような中で、唯一彼我を繋げる人魚という言葉。それが果たして自分の思うと同じものを指すのかさえ、今のセアには分からなかった。けれどスキルストーンが伝えてきたその字面は間違いなく知ると同じで、それ以上のことはこの騎士団とやらに出向かなければ分かりそうもない。 　迷うことなど何もありはしなかった。小さな歩幅の足跡は、テリメインの雑踏に紛れてすぐに消えていった。 　 　 　 （新規登録時の表示文、およびアルカールカ海底騎士団異世界人魚情報収集隊（CNo.138）様の文面をお借りしました！）

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

——辺りは穏やかな潮の流れと、ちらほら入る光で暖かい。
まだまだ遺跡は先へ続いている……。

セアは周辺を探索…………。

ナマコを手に入れた！

セアはSSシェルボックス(低)を購入した。

セアはSSシェルボックス(低)を購入した。

セアはSSシェルボックス(低)を購入した。

セアはTGシェルボックス(低)を購入した。

セアはTGシェルボックス(低)を購入した。

セアは敏捷を訓練した。
セアは敏捷を訓練した。
セアは敏捷を訓練した。
セアは魔力を訓練した。
セアは魔力を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

セアはアイテムNo.5 スイムアップを私有化！

スキルNo.2 マジックアロー をアイテムNo.4 【自MP○%以上】 で改造！
スキルNo.2 マジックアロー の使用条件が 【自MP○%以上】 に変化！

スキルNo.2 マジックアロー をアイテムNo.6 氷属性 で改造！
スキルNo.2 マジックアロー に 氷属性 を付加！

目的の決定