目標とした暫定廃棄物……海底に放置されたトレーラーのコンテナらしきものへと接近する。 　接近して確認したが、やはりこの外壁は新しい金属のようだった。腕部の空洞からマニピュレータを出し、表面を撫でると汚れた沈殿物の下から銀色の面が顔を覗かせる。 　経年の劣化は微少。予測通り、最近放棄された物体だろう。 「遺跡とは到底呼べぬ物体と確認」 　ここで意味のない仮定が電脳に生じる。もし呼吸器官を有していたならば、ため息という仕草でこの遺憾な結果を嘆いたのだろうか。 　時として人間を始めとする生命体の感情表現には憧憬を覚える。彼らは感情の発露とそれに伴う行動で、負荷を発散させる事が可能と記憶している。 　現在のフロランはその機能を欲しいと思考した。思考しつつも、作業は続けている。 　コンテナを一周して外観を観察した結果をまとめる。外観は原型を留めているが、破損と亀裂がいくつか検出された。扉と思われる面も存在しているが、開閉機構は損傷し動かない。さらに幾つかの傷は内部まで浸透している。特殊な構造でも無い限り、このコンテナ内はすでに海水で満たされているだろう。 　されど、亀裂からの有害物質の流出は確認できず。ひとまずは放置しても良さそうではあるが、 「記録機能確認……正常に稼働。これよりコンテナ内部の調査を開始する」 　汎用機人に油断は無い。内部を改め、無害である事を確認する必要はある。 　７７９号フロランはコンテナの後部へと移動。損傷した扉へと腕部を向ける。腕部の空洞から錐状の先端に魔導石を取り付けた武器を展開する。 　魔線銃、最低出力。照射 　自衛用に搭載されたこの武装は、使いようによってはガス切断の要領で、鉄板を焼き切る事が可能である。細い碧の光が破損した扉のレバーに照射され、光は壊れた扉をチリチリと焦がし、やがて切断に成功する。 　ぐらり、と支点を失った扉が揺れる。７７９号は魔線銃を納め、代わりにマニピュレータを出して扉を足下へと倒す。 　この時点で内部から何かが飛び出してくる様子はない。７７９号は慎重に、コンテナの扉に触れ徐々に力を込める。どうやら、支点の損傷は少ない様だ。扉は想定していたより軽く滑らかに開く。フロラン頭部にあるライトを灯し、コンテナの内部へと視覚を移した。 「……」 　コンテナの内部はがらんどうだった。 　荷物袋の一つも無ければ、迷い込んだ小魚一匹の存在も感知できない。ただ海水に浸食されただけの四角い空間が残地しているだけだった。 「爆薬、危険物質の存在無し」 　危険性は極めて低い。そう確認出来てようやく作業は完了。 　そう判断した時だ。集音機関が音を拾った。 　——見つけた。 「！」 　・ 　声は真上から来た。影のようなモノが頭上から迫ってくる。危険を察知し、７７９号はとっさに身をかわす。 　しかし、影が泳いだ。軌道修正した影は真っ直ぐ７７９号の左肩へ付着する。 　危険回避失敗。７７９号は左肩を確認する。まだ損傷は無い。早急に引き剥がすべきと判断し、左肩の状態を視認。 　己の赤い装甲には、人形の様なものが取り付いていた。 　薄汚れた黄色の繊維で編まれた体。短いに胴体に短い二本の腕。毒々しい極彩色の頭部に目と呼べる細工はなく、単純な開閉機構の口が笑うようにうっすらと開いている。 　これが声を発したのか。そもそも何故人形がひとりでに動けるのか。幾通りもの疑問が電脳を駆け巡る。その一切を無視して７７９号は右腕で人形を取り払おうと右腕を振るった。 　しかし人形はこれを軽やかに避け、そして口を大きく、大きく開いた。 　さながら獲物へとかぶりつくサメのように。 「待て」 　７７９号は制止する。だが人形はそんな言葉など聞かず、人形はその大口で赤い肩へと噛み付き—— 「……かひゃい」 　人形から情けない声が上がった。肩に噛み付いて口を離しては、形の崩れたそれをいたわる様に短い腕で撫でている。 「かってぇ、本気でかてえ……コイツ、一体何で出来てやがんだお前」 「汎用機人の装甲は非常に堅牢である。また栄養摂取には不向きです。故に制止をした」 「待てってそういう意味かよ！　いやそれ以前に誰がお前なんぞを食うか！」 　謎の人形は左肩に取り付いたまま、７７９号へと不機嫌に怒鳴る。 　謎の人形と機械人形の己が、こうして当たり前の様に言語を用いて会話している状況に、電脳に形容し難い不可が発生しているが、７７９号は最前発生した疑問を投げ掛ける。 「疑問提示。ならば何故僕に噛み付いた」 「いやそいつは……いやそれよりお前こそ誰だ。ってか何だよ」 「僕は海洋探査型汎用機人７７９号。テリメインの海洋遺跡探査のため製造された自動人形です」 「ほ～。アタシも随分けったいなモンに見つけられたもんだねぇ」 「僕は貴方の疑問に回答した。今度はこちらの疑問への回答を期待する」 「あ～うん。そだな自己紹介くらいいいだろう。アタシは」 「否。貴君の名称よりも噛み付く行動の意義について回答頂きたい」 「そっちかい。そうだな。丁度いい頃合か」 「何？」 　どういう意味か。それを問うよりも早く、謎の人形が不敵な笑を浮かべるのだった。 「ふふふ……悪いね自動人形。お前さんが鉄とかその辺の材質ならもっと楽に乗っ取れたんだけどねぇ。暇潰しに付き合ってくれてありがとうさん」 　感謝の言葉に、けけけと薄気味悪い声を添え、人形は勝ち誇ったように笑う。 「貴様。僕に何をした」 「けけけ、本当に鈍臭いねえあんた。アタシの糸は既にお前さんに侵食しているんだよぉ、たった今現在も。このまま全身に回ったが最後、お前さんはアタシの操り」 「左肩部装甲、パージ」 「へ？」 　ガキン、と硬質な音が人形の引っ付いた左肩から響いた。直後、７７９号の左肩装甲が、コンテナの床へとゆっくりと落ちていく。人形を伴って。 「え、いやちょ、待って。なんで！？」 「貴君の繊維侵食は僕の装甲表面部のみであり、駆動系には達していなかった。貴様ごと装甲を排除し、自己防衛をしたものである」 　丁寧に説明する７７号の足元。先ほどと一転して狼狽する人形は、装甲の下敷きになり潰された蛙の様にもぞもぞともがいている。これならば出会い頭の様に泳いで逃げる事も出来ないだろう。 「繊維による侵食。及び貴様の発言から貴様は他者の機体、若しくは肉体を己の制御下に置き活動する寄生菌類等と同種の存在と仮定。貴様の存在はテリメインとその住人・機械にとって有害な存在であると断定した」 「は！？　なんだその一方的に」 　ジュ、と焼け焦げる音と魔導の熱が続く言葉を黙らせる。７７９号の腕部からは魔導石の光が煌々と溢れていた。 「黙れ有害存在。これより僕は貴様を運搬するための回収ツールを持ってくる。それまでこの場で待機していろ。決して動くな」 「動くなって言われたって動けねえよ。それより、最初からアタシの事も運んだらどうなんだい？」 「運搬中に貴様が再度侵食を試みる可能性がある。安全には万全を期したい」 「今更しねえよ。けど、出来るならこのまま連れてってくれないかな」 「拒否する。加えて僕はまた戻ってくると言った」 「それでも頼むよ、本当に。絶対あんたには糸一本触れたりしないからさ」 「その発言に対しての信頼度は最低である。大人しく待て」 「信用されてないのは重々承知してる。けどそこをなんとかしてくれないか？」 「くどい」 「くどくても。アタシは一分一秒でも早くここから抜け出したいんだ。こんな所に投棄されたままなんて真っ平ゴメンだね」 　それは謎の人形のtだの愚痴だったのだろう。だが、７７９号は投棄の一言に、青い目を光らせた。 「投棄と言ったか」 「ああそうさ。今思い出しても憎たらしいあんちくしょうどもが……」 「貴様は、このコンテナを不法投棄した存在の情報を所有しているのか？」 「もちろんさ。アタシ達をこんな所に箱詰めして捨てた輩だぞ？　百年恨んでも忘れたりするもんかい」 「……」 　７７９号は短く思案し、告げる。 「喜べ謎の人形。貴様は有害存在から重要参考人へと昇格した。僕に同行し情報提供に協力せよ」 　７７９号は敢えて、この有害存在の処分よりも犯人捜索を優先させる事にした。 　不法投棄した存在がこの謎の人形を製造していたならば、より脅威度の高い事案に発展するおそれがあるためである。 　それを知ってか知らずか。謎の人形は満足げに頷き、 「あいよ。こっから出られるならば、喜んでご協力しようか」

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

——辺りは穏やかな潮の流れと、ちらほら入る光で暖かい。
まだまだ遺跡は先へ続いている……。

フロランは周辺を探索…………。

焼き魚を手に入れた！

フロランはSSシェルボックス(低)を購入した。

フロランはSSシェルボックス(低)を購入した。

フロランはTGシェルボックス(低)を購入した。

フロランはマジックアローを購入した。

フロランは重盾を購入した。

フロランは体力を訓練した。
フロランは体力を訓練した。
フロランは魔力を訓練した。
フロランは精神を訓練した。
フロランは精神を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

腕部自衛用魔線銃 に 魔導力強化 を実行！
腕部自衛用魔線銃 の 魔導攻撃力 を 1回強化した。

汎用機人用標準装甲 に 魔防力強化 を実行！
汎用機人用標準装甲 の 魔導防御力 を 1回強化した。

フロランはアイテムNo.4 水弱を私有化しようとしたがスキルストーンではなかった。

フロランはアイテムNo.6 ボディブローを私有化！

目的の決定