海底探索協会にてマリンオークの教官相手の実力テストを終え、事前に約束していたパーティメンバーとの待ち合わせ場所へと向かう一人の人魚。 彼女の名はベルクロワ・ド・フォンティーネ。元の世界ではその名を知らない者はいないほど高名な魔導師であるが、故郷から遠く離れたテリメインでは当然彼女を知る者は誰一人として居ない。 つまり、そのへんを出泳いでいるだけで彼女を慕ってやまない者達に取り囲まれたりする事がないのである。 これだけでも彼女はバカンスと称してテリメインへやってきた事は正解だったと感じた。

彼女は今自由だ。のんびりと観光をしたりテリメインの蟹を食べたり未知の生物の調査をしてのんびりと過ごす事ができるのだ。 そう考えるだけで彼女は表に出す事はしないがすっかり鼻歌気分であった。

	ブランシュール
	「ベルさまあああああぁぁぁぁやっと見つけました！！ブランに黙って長期旅行だなんて酷いじゃないですかあ！もー！！」

この金髪の人魚に見つかるまでは。

彼女はブランシュール・ド・モネ。ベルクロワの部下であり信者の一人である。 どうやらベルクロワの行き先をどこかで聞きつけ、ここまで追いかけてきたらしい。正直このような者が現れる可能性は考慮してはいたが……よりにもよって一番来てほしくなかった相手だった。幸先が悪いにも程がある。

	ブランシュール
	「うふふん、ベルさまベルさまぁ～。旅行にはブランもおともいたしますよ～。研究所のみんなは来ないって言ってましたし遠く離れた未知の海でベルさまとランデブー……きゃー！！」

ベルクロワはくねくねしているブランシュールを呆れたように眺める。しかし彼女以外の人魚はここに現れないという情報はいい収穫であった。つまり目の前の勝手に恋人気取りしてくる頭ゆるふわ人魚のみを撒けば問題は解決するという訳だ。

とりあえずベルクロワはこのままだとどこまでもついて来ようとしかねない彼女に対して既に先客が居る事を容赦なく告げた。急いで合流しなくてはならないのにいつまでもブランシュールに付き合っている暇はないのだ。

	ブランシュール
	「えっ……そう、なんですか？　ベルさまが？　あのベルさまが？　知らないお方々と遺跡調査へ……？？」

ベルクロワは素っ気なく肯定し、相手を待たせているので集合場所へ向かわねばならないという事だけを言い捨ててそそくさと泳ぎ去った。

	ブランシュール
	「ああっベルさま！　そんなぁ～待ってくださいー！ベルさま～！ベルさまーーーぁ…………」

こうしてストーカーじみた部下を撒く事に成功し遺跡探索へと向かううら若き魔導師ベルクロワ、しかしブランシュールは今も彼女を探し続けている……！ 先行き不安な長期休暇、一体ベルクロワに平穏は訪れるのか…… ネタバレ：訪れません

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。