11/12 Saturday

ではでは。 運よくこの日誌の存在を忘れることも無く、再びこうして机の前に向き合うことが出来ました。審査というものもほとんど名ばかりだったようで、労なく教官殿のお許しを頂くことが出来ました。 いよいよもって不可思議の海へとこの身を投げ出し、発見・探検・知らぬ海と洒落込もうと考えている夜。待ちくたびれたという気分と、明日には海中を歩んでいるのだろうという期待がない交ぜになり形容しがたく高揚しておりますが、一先ずそれは隅に追いやっておきましょう。本日この日誌に書き記すべきことと言えば、やはり苦楽を共にする仲間についてでありましょう。 片一方はハーヴェスタ。英国語で収穫を意味する名を持つ、人魚を象った姿の自動人形。逞しい頭脳と美麗な躯体が目立ってそれはそれは綺麗な方。……この場合、褒めるべきは彼女の創造主様なのでしょうか。今のところは人魚以外の型を取るつもりは無い様子。まだその実力の程は目にしていないけれど、人形無骨と言う通りきっと類稀な力を潜めているのでしょう。 そして片一方はリーサ。齢二桁にも満たない幼子のような、海中を自在に泳ぐマフランスェ（私の国の言葉で、ドルフィンの意）のような優美な海の住人のような娘。本当に人間なのかどうか未だに測りかねるところではあるのですが、古今東西の生き物が集う不可思議の海で身辺を無闇に改めるのも無礼というものと思っています。私の隣人にはよくよく静観するように言い聞かせておく必要があるでしょうね。 今、私と彼女達はとある小屋を拠点としています。ハーヴェスタは時折他の探索者に紛れて働いている姿を見かけるけれど、リーサは普段何をしているのでしょうか。いずれ暇の出来る日があれば横を泳いでみたいと考えています。追いつけるかは、ちょっとわからないけれど。 そうそう、明日には探索のみではなく、模擬戦の約束もしているのでした。相手はかの暗黒皇帝率いるメンバーとのこと。仰々しい肩書きを振りかざしては姦しく騒ぎ立てる彼女のこと、おそらく臣下も一筋縄ではいかない個性派揃いなのでしょう。水中戦は未だ不慣れな身である故、こういった機会をよくよく使って経験を積んで行きたいものです。 かくかくしかじか。 よもやま話は数有れど、全てを記していたら到底時間もページも足りません故、今日の日誌はこのあたりで閉じることに致します。また今度、この日誌の存在を忘れておらず、私が根気強い気分のままで居たならば。再びこの日常で起こった出来事を書き止めようと思います。 ではまたいずれ、機会があれば。

追伸：親しげな悪魔フィデナムアへ。 あんたのことだから隠れてこの日誌を覗いているんだろうけど、本当にこの文体が正しい日誌の書き方なのか今度時間を使って問いただしたいと考えています。これ書くのひどく疲れるんだよ。指は痛くなるし目がしょぼしょぼするんだよ。もし口から出任せを言っていたのなら、私が起きている間ずっと賛美歌をヘビーローテションさせるのでそのつもりでいるように。あと勝手にどっか行かない事。

フィデナムア「…………」

フィデナムア「……生真面目だなァ。」

フィデナムア「さてさていやいや。全国のフィデナムアファンの女子高生の皆様、お待たせしました！呼ばれて飛び出て悪魔フィデナムア様だよ！あン？待ってない？そんなイジワルを言う子のもとには袋いっぱいに鉛筆のケズリカスを詰め込んだサンタクロースを送りつけてやろう。 イヤーーーーーァ諸君！手応えのない審査お疲れ様！俺も出る幕がなくてションボリのボンボリのポンポコリンだよ。オリヴィア君も拍子抜け。俺の遠慮は天井抜け。けれども諸君には審査の如何なんかよりガチャの結果が今一番ホットでクールな話題かな？なに良い結果が出なかった？リアルマネーもすっからかん？なにをおっしゃられるのですマスター、貴方にはまだリポ払いが残っているではありませんか。 さて諸君！俺は前回君たちに『無理しないで、絶対帰ってきてね』とメインヒロインばりの熱演でお願いしたな。何故そんなことを願うんだ？と不思議に思った諸兄もいることだろう。そう、何故なら俺は悪魔だからだ。悪魔の仕事は無論、人間の魂を回収することだというのは賢明な諸君ならご存知の通りだと思うが？人間が死んでしまえば、魂を回収することさえ出来なくなってしまう！そんなのイヤだ！おまんまの食い上げだ！俺の家計は火の車だ！事務所にバイクで突っ込むしかない！誰にも縛られたくないと逃げ込んだこの夜に自由になれた気がした15の夜！……そんな事態になるのは俺だっていやだもんね。だからこそ君たち人間には是非とも五体満足でいて欲しい。いつか俺が諸君の魂を頂きに推参するその日まで。 オオット、誰が魂なんてくれてやるかって顔してるね？あるいはグダグダ長いこと喋ってんじゃねーよ、誰がこんな部分読むんだよハゲって顔だ。ハゲてねえよハゲ。しかして悪魔はフェアな取引を好む生き物だ。当然人間諸君にとって悪い話ばかりを持ち込む訳ではない。悪魔は大抵、人間に対しては、『願いを叶える代わりに魂を奪う』という取引を持ちかけるものなのだから。 今！そこの！願いを叶えると聞いて目の色を変えた諸君には是非ともいずれお会いしたいな！残念ながら今日の俺はそろそろお別れなのでな。ではまた会える日を精々心待ちにしているよ！オフコース・アンド・オフコース。明日のラッキーカラーは、嫉妬に狂う怪物の色『緑』だ！」

フィデナムア「ぜってーナマコガールとかヒトデウーマンはマリリン・モンローもビックリな超絶美人だって。もしブスだったらワンピースのナミの格好してテリメイン上空を自己紹介しながら飛び回っても構わないよ。」

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。