おじーちゃんからのメールに従い起動した卵型のデバイス、『エスト』の導くまま、あたしはここテリメインまでやってくることになった。 おじーちゃんが手配したのか、食料やら当面必要そうなものが積まれている小型のクルーザーを利用して （運転やら何やらも基本的には全部自動！）、到着したその場所は一面の海。 だけども肝心のおじーちゃん本人が見当たらない。 『エスト』もその所在についてまでは知らされてはいないということで、あたしはとりあえず人が集まっているらしい、 探索者協会ということころに向かったのだけれど……。 「むうっ！ だ、騙したなロザりん！！」 「………何やねん、このお芝居……」 「サンモンシバイ、トモイウ」 苦し気に水面へと浮かんでいったオーク教官を見送りながら、重い潜水服の中で呟くと、 『エスト』がまるであたしの感情をなぞって、呆れたようにメッセージを送ってくる。 『エスト』は特に感情を持っているわけではないらしいのだけど、時々まるで人間みたいな雰囲気を持った受け答えをしてくる。 ま、うちのおじーちゃんが作ったものらしいので、何かすごいらしい、ということだけは確かみたい。 おじーちゃんはあたしが生まれるより随分昔に何かその時代の革命とか言われるような発明だか発見だかをして、 天才科学者だの何だのともてはやされたこともあるそうだ。 あたしからしてみれば、ちょっと変わった性格で何かにのめりこむとすぐあちこちをうろうろしているけど、 基本お人好しでちょっぴりいたずら好き、わりとあたしに甘いおじーちゃん。 「……ロザリアネット、ヨリ、ツウシン、ジュダク。キカンセヨ、トノコト」 結局おじーちゃんどこにいとるんやろ……、などと思い始めたあたりで、ロザりんかの通信が入って、試験は終了した。 結果は合格。 あたしは、晴れて探索者協会の一員となったわけだ。 特に何も考えずおじーちゃんを追いかけてきたのだけど、成り行きで海の探索をすることとなった今の状況に、 最近ほとんど感じたことのないドキドキを感じていた。 息の詰まるような潜水服を脱いで、わりと露出度の多い水着とウェットスーツの上からパーカーを羽織り、協会のホール内へと戻る。 ぼーっとした視界であたりを眺めまわしていると、受付の人なのか魚なのかわからない系の人？が、 大きな声を出していた。 「すずき……とぅるーすさーーーーん、とぅるーすさんはいらっしゃいませんかー！」 幾人かの人が振り向いたり名前の響きになのか、少しの反応をみせたようだったけれど、 あたしは別の意味で驚いて、慌てて眼鏡をかけると周囲を見回す。 「は……？　何、何なんそれ……。もしかしてあの子、ここまで来てるん？！」 果たして、見回した先には、かつてよく見知ったあの人の姿があった——。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。