「うう、なんでこんなことになってしまったルカ…ボクのデート…」 「ぐちぐちうるさいのぅ。過ぎたことをいつまでも気にしてたらいかんぞ」 無理矢理連れ出され、最早諦めの境地に達したシャルカ。今は主人を背に乗せ、広大な海を下目に空を飛んでいた。 「ふ～～む。どこに遺跡があるかよくわからんの。やはり現地人に話を聞くのが一番か」 「ん？あそこの砂浜に人影があるルカよ」 「ふむ、ちょっと尋ねてみるか。高度を落としてくれんか」 「らじゃルカ」 「…。」 本を片手に持った少年は、目の前に広がる広大な海を眺めながら砂浜に立ち尽くしていた。 ブレザーにワイシャツ、チェックストライプのズボン。無難に整えつつも無造作に見えなくも無い焦げ茶の髪。ケイはどこにでもいる高校生だ…だったハズだった。 手に持つ本の表紙には「Seven Seas TRPG」と書かれている。 ある日新作のTRPGルールブックが発売されたと聞いて買ったはいいものの、本を開き気付けばここにいた。訳が分からない。 本に付属しているキャラクターシートには記入した覚えもないのに自分の姿と、クラス「地球人」の文字が躍っていた。《地球から偶然《テリメイン》に召喚された人々を現すクラスが「地球人」です》。丁寧にありがとう。訳が分からない。 「いやお前…異世界とかお前…」 状況がいまいち飲み込めずその場に倒れ声にならないうめき声をあげていたケイだが、ふと急に起き上がり本を開く。《ワールドガイド》。 「とりあえず細かいことは考えないぞ……《海底探索協会》。ここだ。マトモな導入ならとりあえずここで最低限説明はあるはずだ」 『ルールブック』のマップを頼りに砂浜を歩き出した彼を、一瞬巨大な影が覆った。 「…え？？？」 目の前は一面海で、ここは砂浜だ。日差しを遮るものなんて何も… ふと空を見上げると、なにかよくわからないピンクの物体が空を飛んでいた。あれはイルカか？なんでイルカが空を？？ しかも…なんかこっち向かってきてね？？？ 「！！」 みるみるうちに接近してきた物体は目の前で急停止した。風に舞い上がる砂埃。 思わず手を上げて防御の姿勢をとり目を瞑ってしまう。恐る恐る目を開い先には…子どもがいた。如何にもファンタジーな風味のローブを身にまとい、イルカの背に腰を掛けながらこちらを見下ろしている。 さすが異世界、なんでもアリだな…。脳が考える事を拒否し始め、素直に関心しているケイの耳に、少年の声が届く。 「見つけたぞ現地人」 現地人？オレのことか？？ 「いやオレ地球人。…ここテリメインって言うんだよな？地球じゃないよな？」 自分の口にした地球人という言葉に違和感を覚えながらも、返答するケイ。 「チキュウジン？チキュウ？聞いたことないのー。この世界の人種か？それとも異世界人か？？…少なくとも現地人じゃなさそうじゃの」 あちゃーハズレかー！と額に手を当てて空を仰ぐ少年の言葉遣いは子どもらしくはなかったが、どうやら言葉は通じるらしい。言語が共通なのか、某ネコ型ロボットのこんにゃく的な何かが働いているのか。 「遺跡やこの世界の事を聞きたかったんじゃがなー。いや現地人じゃなくても知ってるかもしれんか。のうお主、この辺りに遺跡があるらしいのじゃが知らんかえ？？」 目の前でイルカがぷかぷかと浮かぶという非現実的な現実から目をそらしつつ、ケイの脳裏に浮かぶのは『ルールブック』の冒頭だった。 《テリメインにようこそ！》 《あなたは、未開の海の世界テリメインを探索されるために、様々な世界から集められた探索者のひとりです》 目の前にいる少年もその一人か？となると、ここはTRPGを踏襲すればＰＴ結成のパートか？ いやそもそも目の前の少年が探索者かどうかもわからない。しかし話が通じそうな人間は今の状況では貴重かもしれない。ＴＲＰＧでの登場人物は大抵ゴールへのヒントを持ってくるものだ。 「その前に一つ聞いてもいい？」 「なんじゃ？あ、わしだけ質問するのもアレじゃな。よかろう、聞くだけ聞こうではないか」 「ありがとう。…ここはどこだ？あんた誰？ あ、オレはヤナガセケイっていうんだけど。何故ここにいるのかはオレもよくわかってないんだ、気が付いたらここにいて。多分さっきのアンタの言葉を借りれば異世界人…だと思う」 地球から偶然テリメインに召還されたクラスです—『ルールブック』の「地球人」の項目を思い出しながら答える。 「ん？現地人かと思ったら迷子じゃったか。たま～にいるんじゃよな～異世界に迷い込むような人間が。世界によっては神隠しとか言われておるの。ふむふむ」 少年はなにやら納得したような様子。そんなにあるのかよ。そういや最近異世界モノは流行ってるな…いやそうじゃない。 「あ、わしはイルプトオーメル…偉大な錬金術師様じゃよ。ここはテリメインと呼ばれる世界のようじゃな。わしも話でしか聞いたことなかったので来たのは初めてじゃ。”ばかんす”ついでに遺跡の冒険にでも洒落こもうと思ってのー。じゃがこの広大な海をしらみつぶしに調べるわけにもいかんので現地人にでも聞こうと思った矢先に丁度お主がおった…という訳なんじゃよ」 錬金術師。ますますファンタジー染みてきたぞ。 それはともかくとして、やはりこの少年も探索者らしい。『ルールブック』を見る限り、自分も探索者…なのだろう。つまりゲーム的には目的は一緒ということだ。ゲーム的には。 「遺跡か。よくわかんないけど、《海底探索協会》にいけばわかるんじゃないか。なんかここにあるらしいんだけど」 手持ちの『ルールブック』を開き、マップのページを広げて少年に見せる。 「なんじゃ、地図があるではないか。《海底探索協会》…なるほどなるほど。ハズレかと思ったら存外大アタリじゃった！！いやお主ならやってくれると信じておったぞ、わしの勘も冴えとるのー」 「」 「いや感謝感謝じゃよ。…ふーむ、結構遠いのぅ」 「えっそんなに？オレもそこに行きたいんだけど。元の世界に戻る手がかりがあるかもしれないし」 「そうじゃなー、空から見た感じと地図を照らし合わせるとなかなかの距離じゃて。道も整備されてる訳でもなさそうじゃな」 「うええ…」 出鼻をくじかれた気分だ。とはいえ他に手がかりもないし、ここに立ち止まっていても仕方ない。行く以外に選択肢は…。 ん？そういえばこの少年は異世界から来たような口ぶりだった。世界を渡るのをまるで当たり前であるかのように。ふと気になった事を聞いてみる。 「…あんたも異世界人？」 「ん？この世界の住人ではないという意味であればその通りじゃ。」 さも当然のように、あっさり答える少年。 「俺、元の世界に帰れるのかな」 心の奥底にあった不安がつい口から出てきた。家族、クラスメイト、一緒にTRPGを遊んでいた友人の事が頭をよぎる。 「世界を渡る手段はお主が思ってる以上に豊富じゃよ。それに来た道がある以上帰り道もあるじゃろ。 わしの知る限り、何もなければ世界を渡る事はできん。世界を渡ったキッカケに心当たりがあるか？それが鍵じゃ。それ以上は自分でなんとかするんじゃな。 …あ、わしの事は頼るなよ？お主の世界がどこにあるかわからん以上辿り着くのは不可能に近い。地図も無しに海に出るようなものじゃて」 この世界に来たキッカケ。それは間違いなくこの『ルールブック』だ。しかもこの世界は『ルールブック』に記載されている通りの世界。鍵はこの本…？ …どちらにしろ、《海底探索協会》に行く以外に今は選択肢がなさそうだ。 話を聞いて、少し気が楽になった気がした。『異世界人』が自分以外にいるのもどこか心強い。 「ああ、そうだ。地図のお礼と言ってはなんじゃが、協会まで連れて行ってやろうか？」 「えっまじで？」 「まじまじおおまじじゃ。ま、大した手間でもないしの」 「運ぶのはボクなんルカけど…」 ピンクのイルカがぼそっと喋ったような気がしたけど聞こえなかったことにしておく。 「いや助かるよ。それじゃあお願いしようかな。」 「おう、泥イルカにのった気分になって任せておくがよいぞ」 「誰が泥ルカ！！あとボクはシャチルカ！！！」 シャルカの叫びは聞き届けられることなく、異世界迷子の地球人と少年錬金術師は海底探索教会を目指して旅立つのであった… -To be continued … …… ……… 「…なぁ、運んでもらってこう言うのはなんだけどさ…もうちょっとなんとかならないのコレ。ちょっと怖いんですけど」 海底探索協会へ向かう途中。ピンクのイルカと少年錬金術師に運んでもらえることになったのはいいが、今のケイは縄を胴に巻き空中に吊るされている状態だ。 しかもこのイルカ、結構速い。そして高い。気分はバンジージャンプに近かった。 「仕方なかろう。言うてコレが一番安全じゃぞ？ 生き物に騎乗するのは存外難しいものじゃ、未経験者なら尚更じゃな」 あー確かに騎乗スキル持ってなかったなオレ…キャラクターシートにもなかったしな…。 もうなんでイルカが空飛んでるのとか、その縄どっからだしたとか、そういった事全てが些事に思えてきた。今なら何が起きても驚かない自信がある。オレはまた一つ大人になった。 そんなどうでもいい事を考えながら、一匹と二人は目的地に向かうのであった （PTM:PNo.1095 柳ヶ瀬 慧君をお借りしています）

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

——辺りは穏やかな潮の流れと、ちらほら入る光で暖かい。
まだまだ遺跡は先へ続いている……。

イルプトオーメルは周辺を探索…………。

シェルボックス（低）を手に入れた！

イルプトオーメルはゴーグルを購入した。

イルプトオーメルはSSシェルボックス(低)を購入した。

イルプトオーメルはSSシェルボックス(低)を購入した。

イルプトオーメルはSSシェルボックス(低)を購入した。

イルプトオーメルはSSシェルボックス(低)を購入した。

イルプトオーメルは魔力を訓練した。
イルプトオーメルは体力を訓練した。
イルプトオーメルは魔力を訓練した。
イルプトオーメルは器用を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
イルプトオーメルは器用を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

サファイアアゾット に 魔導力強化 を実行！
サファイアアゾット の 魔導攻撃力 を 1回強化した。

アルケミーローブ に 物攻力強化 を実行！
アルケミーローブ の 物理攻撃力 を 1回強化した。

イルプトオーメルはアイテムNo.3 マジックブレイクを私有化！

イルプトオーメルはアイテムNo.4 マジックアローを私有化！

イルプトオーメルはアイテムNo.7 バンシークライを私有化！

目的の決定