---そう、”私達”は人を見つけたのね。 はやる気持ちを抑え切れず、海面付近から一気に水上に飛び出した。 外はまだ薄暗く、夜明け間もない頃といった所だった。 見慣れない明るい赤、黄、橙色の光が、幾度も輝いていた。 水中とも棲家ともまた違う、風の音が聞こえた。 私にはその体験が、いやに印象に残っている。 大きな音を立てて、私達の身体は一人乗りの小さなボートの上に乗り上げた。 船に積まれた装具や、濡れた身体からポタポタと雫が落ちる様子、そして、私の突然の訪問に驚愕している人の顔。 全てが物珍しく感じられた。 「ハイ、こんにちは」 私は狼にいつもそうするように挨拶をした。手をひらひらとさせるのは人間向けのアレンジだ。 狼は私の首元に巻き付いて、唸りながら１人の男を睨みつけている。 （まだ食べちゃダメよ？）と、小さく耳打ちした。 「……あぁ、驚いた。こんにちは。」 「ワオ、返事がきたわ。すごい」 狼や触手のみんなは、あまり喋れない。 「あなた、人間でしょ？」 「如何にも。そういう君は何者かね？」 「何者？私は、私達は……考えたこともなかったわ。」 私達は、何者なのか？その答えが書かれた書物は棲家にはなかった。 色々な動植物の図鑑や、資料があるばかりだった。 ただ、私達を指すであろう文字が、壊れた寝床に刻印されていたことを覚えている。 「……ミクスキュラ、それが私達の名前。ねぇ、私達は何者なの？」 その答えは、この海にあるのかもしれない。 彼はそう言うと、自分が海底探索協会の一員であること、現在協会は探索に協力する者を募集している事などを教えてくれた。 ここまでが、協会に参加するまでのあらまし。 そしてここからの物語は、私達次第ってことね。

「面白くなってきたわ、あの時すぐにあのおじさんを食べなくて正解だったでしょ？」 私以外もそれに同意のようだった。……大食いの狼を除いては。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。