「～♪」 名ばかりの審査を終えて、アウラのうたをうたいながら通りを歩く。 審査会場は人で溢れている。みんな、探索者になるためにここに集まったのかな。 「おなか、空いたなぁ……」 確か、あっちの通りを入ったところに、美味しそうなレストランがあったっけ。初めて来たところだし、多少は贅沢してもいいかな。 ん？ んんん？ 探索の準備を整えた探索者の群れのなかにひとり、場違いなサイズの女の子。きょろきょろと辺りを見回して。 もしかして、迷子かな。周りの人は、自分のことで精一杯で、足元の小さな動揺には気がついてないみたい。 近づくと、その女の子は、目に一杯の涙を浮かべて、今にも泣き出しそうな様子だった。 「ねぇ、あなた。こんなところでどうしたの？誰かと一緒だった？」 しゃがみこんで、視線を合わせて。 これなら、ちゃんと話してくれるかな。 「っく……いっしょ……いたけど……いなくなっちゃ……」 アレ……？ ナンダカアッタカイナー？ナンデカナー？ 女の子に抱きつかれていた。当然だけど私に子供はいないし、アウラにもいないから、どうしていいのかわからない。撫でてみればいいのかな。よしよーし。 あ、そういえば。 「あなた、迷子なのよね？近くに、迷子の人を探してくれるところがあるの。そこに行ったらなにかわかるかもしれないわ。よかったらついてきて。」 「ん、いく……」 歩き出した私に、彼女はついてくる。 ……私の左手は、小さな右手を包み込んでいる。 ＊ 「とっちゃ～～～！」 迷子センターに到着するや否や、女の子は私の手をすり抜けて駆け出した。とっても不安だったのだろう。右も左も体格いいひとばかりだったものね。 ぼんやり彼女に向かう先を眺める。 ん？ おかしいな。 とっちゃって、お父さんって、意味だったような。 ＊＊＊ 女の子が飛びついた先にいたのは、珊瑚のような赤い髪も、海のような青い瞳も持たない、そもそも初めて見る種族のひとだった。 大きな角に大きな爪。太いしっぽが地面すれすれに揺れていて、いかにもリザードマンといった見た目。 最初はびっくりしたけれど、女の子はとても懐いていたし、悪い人には見えなかった。 だから、探索は彼らに同行することにした。 もともと、私一人では戦うのには向かないしね。 それから後二人、とっても横柄な態度の男の子と、彼に振り回されている女性も、一緒に探索をすることになった。話を聞いてみれば、どうやら男の子の方は探索には来ないらしい。 あとから思い出してみれば奇妙な縁だけど、多分、一人よりはずっとうまくやっていけると思うわ。 次の手紙では何か海で見つけた面白いものについて書けると思う。 だから、期待して待っていて。 でも、一緒にいく5人の中で2人が迷子になっているなんて。私がしっかりしないといけないわ。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。