潮の香りは嫌いじゃない。あの都市では決して嗅げない匂いに、解放された自分がいると、確かに感じられるから。 　——空の色を閉じ込めた　胸の輝きそのままに——

「……いや、違うわね？」

リュートの弦を軽く弾くと、潮風がアタシの自慢の亜麻色の髪を拐おうとする。そんなに早く海へと誘いたいのかしらと、自然と笑みがこぼれた。 　穏やかな海《セルリアン》。その海を眼下に臨む、とある小さな島の小さな町。アタシは高台の広場で、欄干にもたれかかりながら海を眺めていた。 　——海の色を閉じ込めた　胸の輝きそのままに—— 　自慢のよく通る声に詩を乗せて、楽器を鳴らす。これで良し。しっくりくるワンフレーズが決まれば、後はスラスラと出て来るもの。リュートを傍らに立てかけて、気に入った歌を書き連ねて、と。

「それじゃあ、そろそろ行きましょうか♪」

そう自分に言い聞かせるように呟き、手早く荷物をまとめて、そのまま欄干からひと思いに飛び降りる。普通の人なら受け身を取らなきゃいけないでしょうけど、アタシは最小の動きで足から見事着地。審査員がいたら100点満点はもらえるはず。 　髪にネックレスがひっかかったから振りほどいて、いざ目的の場所へと歩き始める……つもりだったのだけれども、何かの視線を感じたものだから、人気の少なそうな場所に目を凝らした。

「……あら、こんな所にいたんじゃない、審査員長」

アタシの目線の先、その路地裏には三毛猫の姿があった。さっきのアタシの華麗な飛び降り（字面を見るといささかおかしいわね？）でも見ていたのか、驚きで固まってしまっているようだった。感動を表すべく、軽く投げキッスを送ってみる。アピール点を評価してくれたのか、猫は一瞬だけニャッと声を上げて尻尾をピンと伸ばすと、弾かれるように奥に逃げていった。 　緩やかな坂を下り、時折幾つにも分かれた道を迷わず選んでいく。この街はとても過ごしやすい場所だった。よそ者でも海産物でもなんでも気にしないのか、アタシみたいな吟遊詩人がいても気に留めない。街ではさっきみたいな場所で穏やかに海を見たりして過ごせるし、酒場もチラホラ見かけるからそこで営業をしているから、飢えたり宿に困ったりは今の所していない。まさに天国ね。 　まあ、それだけじゃ物足りないから、今移動しているのだけれども。 　ようやく海辺に沿った道に出てすぐの土地に、こぢんまりもしてないし大きすぎるわけでもない普通の建物があった。だがその存在の主張だけは大きく、入り口横の看板に海底探索協会と書かれていた。 　この世界の海の底には、遙か昔に滅んだ古代遺跡が眠っているらしい。その名も≪テリメイン≫。発見した者はこの海底探索協会を発足して。その調査をしようとしている。そして、ここは今、志を共にする探索者を募集しているとのことで。 　海底、遺跡、未開の地。これらのフレーズが揃ったら、それは冒険談に回顧録に奇譚にと、物語は幾つでも作れる。話のネタ飯のタネにもってこいなだ。 　詳しくは知らないが、海底に潜るための一通りの装備も配布されるらしい。しかも遺跡探索とは別にバカンスと称して休暇を満喫し遊ぶこともOKとあっては、参加しないわけにはいかない。自然と口元に笑みが零れるのを、アタシは抑えることができなかった。 　唯一気がかりなことと言えば、その探索の時には誰かと組んだ方がいい、とのことだったけど……まあ、協会の中に入れば、誰かしら募集しているでしょう。置いてきた二人のことを思い出したけど、今から呼べるわけでもないだろうし、気にしないことにした。

「……よし、と」

自然とこぼれた自分の声色に、少しだけ緊張していたことに気づく。そんな気負いすることでもないのに、と少し笑ってそのまま、目の前のその扉をくぐった。

「どうも。こちらは海底探索協会であってるかしら？」

——海の色を閉じ込めた　胸の輝きそのままに 　　　どこまで行こうか　いつか出会えるその時のため——

《海底探索協会》

《海底探索協会》

オリヴィエは周辺を探索…………。

今回はアイテムを見つけることができなかった！

オリヴィエは精神を訓練した。
オリヴィエは精神を訓練した。
オリヴィエは精神を訓練した。
オリヴィエは精神を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
オリヴィエは精神を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

目的の決定