『Seven Seasのるるぶ買った』 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　既読「お」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　既読「どんなよ」 『ぱっと見LISU系のシステム』 『けどまだぱっと見だからよくわかんね』 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　既読「なるほど」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　既読「俺も見たい」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「今どこ」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「おーい」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「柳ヶ瀬ー」 　*** 　——海は広くて大きかった。この海は、彼の知る海とは異なり、見渡す限りにレジャー施設も高層建造物も見当たらない。だからこそか、よりいっそう広々として見えた。 「…………。」 　白いシャツの上に長袖の黒いブレザー、チェックのぱりっとしたズボン。おおよそ海には似つかわしくない衣服を着た少年は、砂浜に体育座りで、波が静かに寄せては返す穏やかな海を眺めていた。生気が行方不明になりかけている微妙にうつろな目で。 　彼が膝に回した右手には『Seven Seas TRPG 基本ルールブック』と書かれた大判の書籍があった。彼はのろのろと書籍を膝の上に立てると、適当にページを開く。真白い。そのまま親指の力を加減して、適当にページをぱらぱらぱら、とめくっていく。その大半には最初に開いたページと同じくなにも書かれておらず、少年は弱々しく呻き声を上げた。 　そのまま書籍は最後のページに至り、彼は力なく膝を抱え込んでいたままだった左手を書籍の表紙に添えて、最初のページを開き直した。……そこは今までの書籍の真白さとはほど遠く、カラフルなイラストで彩られたページが数ページほど続いていた。そしてそのあとに、白黒印刷の文字組みが続く。 《テリメインにようこそ！》 《あなたは、未開の海の世界テリメインを探索されるために、様々な世界から集められた探索者のひとりです》 　"あなたは"。……気にも留めないシステム上の用語だと認識していたものが、ざくざくと精神をえぐっていくような、そんな音が聞こえた気がして、彼はまた呻く。 　少年は左手で本を上部から押さえると、もう片方の手でそのページに挟み込んでいた紙を抜き取り、片手で器用に開いた。見開きにしたときのその書籍と同じサイズの紙は、細かく枠線で区切られており、なにかの記入用紙のように、いくらかの文字と大半の空欄で構成されている。 《Seven Seas TRPG キャラクターシート》 《キャラクター名 柳ヶ瀬 慧》 　このキャラクターシートを確認するのも何度目だろうか。 　彼、柳ヶ瀬 慧は、肺の中の空気を絞り出すかのように重く深く息を吐き出した。 　……彼は、いわゆる「普通の高校生」である。通う学校のカリキュラムを上等とは決して言えないが及第点程度ではある成績で日々こなす、マンガとゲームをこよなく愛する「普通の高校生」。 　そしてその日は、彼が待ち望んでいた (彼の交友範囲の間でも、それなりに話題に登っていた) 新作のTRPGルールブックの発売であった。彼はその日の授業ののち、上機嫌に書店に向かい、首尾よく予約済みであった目的のものを入手してきた。 　その後、たぶん友人も見たがるだろうと判断した彼は、学校に戻り図書室の空いた一角に席を取り、その友人と無料通話アプリのメッセージ機能を使って適当なやりとりを繰り広げながらルールブックを開き—— 　——そのルールブックから、眩いばかりの光が溢れだしてきたのはその時だった。 　視界は真っ白に塗りつぶされ、——………。 　……ふと気付くと、彼はなぜだか、この砂浜にいた。 　それがおおむね、1時間ほど前の出来事。 「いやお前そんなさ、ネトゲとかじゃあるまいし」 　その現実を認めたくない己に、どうにかその現実を飲み込ませようと無理矢理に絞り出された声。 　彼の手にする『キャラクターシート』の「クラス」と記された項目には、《地球人》と刻印されていた。『基本ルールブック』のページを手繰れば「クラス：地球人」という印刷されたページがあり、彼の衣服によく似た海には似合わない服装をした少年のイラストが描かれており、そしていくらかの文章が綴られている。 《地球 (あるいは我々の住む地球によく似た世界) から偶然《テリメイン》に召喚された人々を現すクラスが「地球人」です》 「いやお前」 『キャラクターシート』を折り目に従い半分折りにして、開きっぱなしのページにそっと差し込んでから、書籍をぱたりと閉じた。視界を遮るものがなくなり、目の前に広がる海は広くて大きい。彼が知らない海。おそらく、彼の故国には存在し得ない、そんな広大な海。 「異世界とかお前」 　それは、認めたくはなかった現実。 　ようやっとその言葉を口にした——あるいはしてしまった——彼は、ああああ、と濁った声を喉から絞り出しながら、ゆらりと横に傾いでそのまま倒れ込んだ。心境的にはもはや笑うしかないという域であったのか、くたびれきった半笑いでしばらくそのまま砂浜に彼は転がっていた。 　……そして、ふと急に起き上がって、手元の荷物をまとめてから立ち上がり、身体に付いた砂をぱたぱたと払い落とした。 　一緒に飛ばされてきたらしい通学用の愛用のカバンを肩にかけると、『基本ルールブック』を手にとって開く。《ワールドガイド》。 「とりあえず細かいことは考えないぞ……《海底探索協会》。ここだ。マトモな導入ならとりあえずここで最低限説明はあるはずだ」 　余計なことを考えないようにすれば、楽に進むことが出来る人生の道もある。 　頭の中でいろいろなもののスイッチがOFFにされていくのを自覚しながら、彼は『ルールブック』のマップを頼りに歩き始めた。

《海底探索協会》

《海底探索協会》

ケイは周辺を探索…………。

今回はアイテムを見つけることができなかった！

ケイはSSシェルボックス(低)を購入した。

ケイはTGシェルボックス(低)を購入した。

ケイは体力を訓練した。
ケイは体力を訓練した。
ケイは敏捷を訓練した。
ケイは敏捷を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
ケイは器用を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

目的の決定