自分は類稀なる、人間離れした身体能力には恵まれたが、他人を癒す力を備えることは出来なかった。
　それは自分の生きる世界にそういう概念がないからだ。薬を調合すること、手当をすること、または医学。それが個人の限界であり、だが、自分は一人で生きてきたから、人智を超えた治癒能力をも持ち合わせていたから、そういった諸々はうまく身に付かなかった。

　この世界を訪れてからもそうだった。
　エンブリオと呼ばれる不可思議な力が跋扈する世界で、”癒し”の力を備える者は少なくはなかった。どれだけ本人が傲岸不遜な性格をしていても、繊細さなどとは縁のなさそうな形でも、他人の傷を癒し、守る力を持つ者は多く見られた。
　今、こうして花冠の刃を掻い潜り、負わされた傷をすぐさま癒していく同行者もまた。



　お前には救えない。



　斬り刻む。
　修復された傷に刃を突き入れる。繰り返すたび速く、深く、より鋭さを増して。
　単純な話だった。相手が癒しの力を備えているのなら、それを上回ればいい。
　死ぬまで殺せばそれでいい。

　傾ぐ身体を斬り払う。腱を断ち膝を着かせ、体勢を立て直される前に突き放す。
　引き絞る極弦で身を縛る。



　簡単だ。
　殺してしまうのは、簡単だ。



　お前を殺すことは、きっと、簡単に出来てしまう。

頭が少し痛くなりそうだ、そう思っている。しかし分かる部分はちゃんと理解している様子。

小さく頷いたりもしていた。

酒は好きだ…という言葉にナナシはにかっと笑って見せて。

と、高らかに上げた盃を花冠の盃へと合わせ、注がれた酒を飲む。
盃が空になれば床へと置き花冠へまっすぐ視線を合わせ、話を静かに聞く。

そして聞き終えれば笑顔を見せて。

そう言うとぱらと紙と筆を出し、解決策を出そうとする。

上位権限者なら制限なんて無いんでしょうけど

などとぼやきながら冷めたヤカンを背嚢に吊るす

火の始末はしたし、あとはカップを2つしまうだけ

そして数日後、次に出会った時
花冠の周りにたくさんの窓が浮かぶこととなる


[PL私信：問題ないようでしたら次の花冠さんからのメッセ後、時間経過を伴う場面転換をしたく思います　ご一考いただけますようお願い致します]

にこにこと褒める。

親切心のようだ……。
尋ねられると、小さく頷いて。

改めて、カカンをしげしげとみる。

リスとは

案山子の背後に黒い旗がはためく。