その地を這う小さな身体から見上げる人間は、あまりに巨大だ。
そんなものと対峙するという、
勇気を振り絞ってねぐらから出てきたヨドの頼みを無下にする気にはなれず契約した。
ヨドが自身の外見をコンプレックスにしているのは初対面時に察していた。
だからそれを隠したがってフードやローブの中に入り込むのをティムラハは黙認した。
克服しろと強制するつもりはない。
ただ本人が「頑張る」というなら、その後押しはしてやろうと思っている。
今のところ、狭い人間関係の中ではあるが、
頑張っているその姿は微笑ましい(ややおかしな方向に流れている雰囲気が気掛かりだが)。
まったくの他人様に迷惑を掛けない範囲ならば止めるつもりは今のところない。

ティムラハは小さい妖に好かれるのは嫌いではない(大きいのは遠慮願う)。
人形に好かれるのは少し考えものではあるが
(実家に帰ったら、自室の少女人形が増えていると確信している)、
こう見えて、小動物の類は好きな方だ。
そしてティムラハは猫より犬の方が好きである。
気分屋の動物のご機嫌取りはあまり好きではない。猫などは最たるものだ。
全身で喜びを表し、全力で甘えてくる犬の方が相手になりたいという気分になる。そういうことだ。
とはいえ先日、結局トモの無言のおねだりに折れ、
ウナギの頭を上げてしてしまった辺り、小動物(マーメイド？なにそれ)には総じて甘い。

そう、甘いのだ。特に、自分に好意を寄せているものに対しては。

フードの中に出来た小さなプール。
キヨは多量の水と同化していない状態では収まりの良い場所に身体を預けたがる性質のようで
(魚籠に詰まっていたのもそれが原因のようだ)、ヨドが収まっていたフード内に勝手に侵入したのだ。
二体合わせて、10kgほど。
フードはぱんぱんに膨らみ後ろに強く引っ張られ、肩は重く息苦しさを覚える。
流石に追い出そうと思ったが、
しかしヨドが見るからに嬉しそうにしていたので、結局受け入れた。
ティムラハは≪トライター≫を肩に掛け直し、首を回した。

あぁ、肩が凝りそうだ。

＞プレオネ

サトリにはあまりいい思い出がないのか、苦い表情で極力考えないように努めているようだ。

＞ゼノ

ミカさんと呼ばれた女性は黄金の大剣を背負っています。