ずっと昔。

「花はねー。愛情を込めると、綺麗に咲いてくれるんだよ。」

…愛情って、なに？

「うーん。心のこと、かなあ。綺麗になあれ、って成長を応援してあげることとかさ。」

私に、花は愛情を込めると育つと教えてくれたヒト。
そのヒトは、優しくて、元気で、綺麗で、きっと、愛情が満ちているヒトなんだと思った。

だから...

いえ。
なのに、そのヒトの、"心を込めた" 火の薔薇は、なんだか元気が無くて、早くに枯れてしまった。
がっかり、ね。

鹿矢の被った目出し帽の天辺を掴んでぐいぐい引っ張る

蠢く薔薇を収めたハーカを見て　心で舌を出しながら刀を持つ手に力を込める
そして いざ踏み込もうとした 瞬間　ハーカの冗談みたいな言葉が　骨の隙間を貫き通った

あまりに間の抜けた　突拍子の無い言葉に呆気にとられる

頭骨を指で指しながら　すっかり毒気の抜けた様子で呟いた

男はただじっと火の薔薇をみつめていた

火の薔薇が揺れる。