✩旅の始まり✩

書きかけの日記を荷物整理している間に見つける。
「ああ、日記もちゃんと続けて書けないのか……」っと自分を情けなく思いつつも……飛ばし飛ばしページを捲る。
時々指を止めては、「こんな日もあったなと……」っと目をつむればその光景が直ぐに呼び起こされるような感覚に少し目頭が熱くなるのを感じる。

必死に感情を抑えつつ、最後のページまで辿り着く……そして筆を取るり短く、しかしどこまでも強い思いを込めながら……いままで出会ってきたひとり一人の名前と「ありがとう。」の文字を記していく——

数分で静かにその儀式を終え、大事に大事に風呂敷の中へと包む……これで荷支度もおわりだ。

あとは最後に一番お世話になったお姉さま達に挨拶をしつつ……"彼"の元に向うだけ……そう向って新しい旅の始まりだ……そこに何の不安も無いはずだ……

無いはずなのに……とてつもない虚しさを覚える……それだけ今日までの日々はとても居心地がよかった……だからもうちょっとだけ……不謹慎だけどこの騒ぎが続いてくれればと思った。

……でもそれは叶わないだろう。

何より折角平和になったのだから……自分のこんな気持でそれを台無しにするのはやめよう……それにこんな気持じゃ"彼"にまた怒られてしまうだろう……ただこの寂しい気持ちは……やっぱり今くらいは許されていいはずだ。

……本当、今日で終わりだなんて……………………




……うん、考えても仕方がない……それに分かってた事だ。
いつまでもこの生活は続かない事なんて……なら、やっぱり前を向くべきだろう……何より"彼"を見失ってしまう。

さぁ……まずは何処に行こうか？……出来れば……出来ればこの先の旅がつつがなく平和で……優しくありますように。

文章は少しだけ読めるようである　顔のある野菜果物ばかりを見つけているけども

この会話が終わって、少し経てば…新王の何たるかが知れ渡る事になるのだろう
触手娘は、ほとんど観光に来たようなものであった　喋る林檎を眺める程度に