草木で彩られた王城の前で、少し前の出来事を思い出した。

　穴から落ちて、気がついたらどことも知れない世界で、よくわかんない住人達が喜んでる光景が映ってきて、やったぞ！とか 成功だ！とか叫びながら大はしゃぎ。え、何？何なのここ？状況が飲み込めないアタシは、地面にぺたりと座っていると、一人の住人がにこにこしながら手を差し出してきた。
　連れられるままに案内されたのは、村長とか族長とか、何だか偉そうな雰囲気の人の前で、勝手に聞きたい事をぺらぺらと喋り始めた。ここが別世界で、王様が支配していて、住人は反発。それで一揆を起こす為に、異世界から腕の立つ精鋭を呼びだしていたんだって。…アタシ腕っ節とか強くないんだけど。っていうか精鋭とかどうやって選んでるのよ？
　そのあたりの話題を指摘すると、村長は大きく咳き込んで誤魔化された。あ、そう。適当に選んでるのね…。
　途端に胡散臭く思ったけど、とりあえず話は全部聞く事にした。一応、礼儀は守っとかないと。
　一部うやむやにされた村長の有難いお話を聞いた後、広場の方で小さな歓迎会に招かれた。歓迎会は品も量もさほど多くはなかったけど、歓迎してくれる気持ちは素直に受け取ることにした。おじさんばかりで堅苦しかったけど。
　歓迎会が終わって、その日は村に泊まることにした。村の小さい資料館でだいたい必要なことを学んで、その日はそのままぐっすり。ベッドが思ったよりもふかふかで、この日一番の幸せに包まれながら、アタシは一日を終えた。
　翌日、朝日が昇りかけた時刻に起きて、資料を読み解きながらエンブリオと契約してから旅支度。村の人達は思ったよりも早起きで、アタシが準備をしている間、律儀に弁当を作ってくれたりして、出発する時も見送ってくれた。



「……はぁ、一揆ねぇ」
　あっちの世界でも、年貢を払えない住人達が集まって、反乱を起こした事とかあったような気がする。あの時は農民達が起こしたものだったから気にも留めていなかったけど、まさか自分が参加するとは思いもしなかった。あまりそういう気にはならないけど、一応呼ばれたのだから、とりあえずの事はやらないと。召還されて働かないのは仁義に反するって言うし、やるしかないわよね。
　アタシは一緒に持ってきた竹光をしっかりと携えると、一揆に向けて歩き始めた。