前にいた場所が今よりいいところだった、とは思わない。

ただオレは被保護者で、危険な場所からはとりあえず護られていたから、今よりは多少はマシだったかも知れない。
もっとも、あの日あの時、運悪くオレは略奪のさなかにいて、隠れてぶるぶる震えて隠れていたんだけれど。
一緒にいたみんなは無事だったろうか？
オレは彼らを護れたかどうか、最後まで責任を持たないまま、こっちの世界に来てしまった。もちろん、罪悪感もあるけど、今、オレはあの時持っていなかった、みんなを護る力を、持っている。まだ足りないかも知れないけれど。

ゴレムに手を置いて、呟く。
すべては始まったばかりだ。元の世界に戻れるのか、また別の世界に行くのか、分からないけど、やれることをやっていくしかない。
オレはくじけそうな心を奮い立たせながら、前を見据えた。