たった5体程度の敵に撤退を考えざるを得ない今の自分の力に嫌気が差す。
その場にいた者たちと共闘してあしらったが、あの程度の数は自分一人でもどうとでもしないといけない。

故郷で用いられている魔法は極めて強力で、他に類を見ない程優れたものであるという自信…
というよりも、確信がある。
しかし、それを扱う自分はまだまだ未熟。それは自覚しなければならない。
せいぜいが十把一絡げの魔法使いと同程度。情けなくて涙が出る。
血統に恵まれ、才能に溢れていたとしても、経験というものが全く不足しているのだ。

内乱の起きているこの世界の現状は、自分にとって非常に都合がいい。
経験を積み上げ、一気に飛躍してやろう。

そう考えている時、一つの情報が入る。一揆の参加者が噂していたものだ。
近くの砂地において、黒ずくめの女が一揆に参加している者たちを襲撃しているらしい。
かなりの手練れだとか。

丁度いい。ひとつ、自分の輝かしい未来のために犠牲になってもらおう。

…戦いに関する事には積極的になれる自分が自分で、ちょっとおかしい。
もう少し、落ち着いた性格だと思っていたのだけど。

結局、あまり状況がよく分かっていないらしい。

そう言って、ちらりと黒髪の少年の方を見る。

警戒するように鳴いている。

警戒しすぎて魔物化したようだ。

安全だと分かったのか、元に戻った。

なにかをつついている。

様子をうかがっていたが、身構えられたので驚いたようだ。

驚いてうっかり魔物化した。

戦闘が終わったことを理解したらしい。

元に戻った。