5日目（夜）

　お囃子の音やバイオリンの音楽など様々な音楽が所狭しと響き合う。
　屋台がそこかしこで開かれ、人々は笑顔で歩いていく。
　服装は様々で、浴衣の人もいれば作務衣、鎧姿、ドレスなど自由に皆が着飾っている。
　遠くでは花火の試し打ちが行われ、音が鳴る度に子供たちが空を見上げまだかまだかと瞳を輝かせる。
　ここは、ある館の近くで行われている夏祭り会場。
　門の入り口にはこう書かれている。
　
　[Summer Vacation]
　
　館の一角に部屋を間借りしている享楽も祭りの会場へと一人（＋3人?）で足を延ばしていた。
　対トキサメ戦での2連敗から調子を崩し、気分を変えるため進行方向を変えた山でも1敗を期している。
　同じ一揆参加者との差（経験値や資金力）を感じつつも、打つ手打つ手が悪い方向へ走っているので、部屋などに籠もっていると意識が底なし沼へと引き吊り込まれそうになっていたのだ。
　
　そんな折り、館で祭りが行われることが決まった。
　最近の闘いでは何とか勝ちを拾えるようになったこともあり、協力してくれているエンブリオの慰労も兼ねてまつり会場へと享楽は遊びに来ていた。
　
　「う〜ん、結構盛大にやってるなぁ。」
　「ぐも。」
　「そやなぁ。店もぎょうさんおるわ。」
　「うん」
　享楽が呟くとエンブリオの一花(アニマ）と二花(ハニワ）、三花（ハーピィ）が同意するように声をあげる。
　
　入り口からいろんな店舗を眺めながら歩いていく。
　祭り定番のお好み焼き・たこ焼き・焼きそば・綿あめの四天王はもちろんとして、チョコバナナやリンゴ飴などの幹部レベルも軒並み揃っていた。
　「違う世界でも店の種類とか俺の生まれた世界と同じなんだなねぇ。」
　「それはあれや、こういう店の多くは違う世界の人間が持ち込んだらしいで。」
　「うん。以前にも違う世界からの渡航者がいるらしくて、その人達が伝えていったらし・・・い。」
　三花が風切り羽で指す方向を見ると、一揆に呼ばれたメンバーの一人が
屋台を切り盛りしていた。
　金魚（?）屋やかき氷店（危険な香りがする）、水飴屋台（お・・・オネエ?）などふつうとは少し違った趣のモノが並んでいる。
　「なるほどなぁ。」
　（これは、伝えて良いのか？）
　
　ちなみに、静かにしている一花はというと買い与えたお好み焼きをほおばりすぎて頷いているのか咀嚼しているのか分からない状態にある。

　しばらく会場を回った後、最期の花火会場へと一行は足を踏み入れた。
　場所取りをした後、屋台をまわって得た戦利品や感想などを話題にしながら花火が上がる瞬間を待つ。

　「だから、たこ焼きのが旨いやろ！」
　「ぐも!?綿あめのふわふわ具合をなめないでいただきたい!!」
　「リンゴ飴・・・羽にくっつくからきらい・・・」

　酒を片手に、喧噪を肴に。
　享楽はエンブリオ達が騒いでいるのを横目に杯を傾ける。
　
　「いや〜今日の酒は格別旨いさ！！」

　次第に日は暮れ、もうじき花火が上がる。
　エンブリオ達も花火を心待ちにしているのか、享楽の酒をちびちびなめながら空を見上げている。
　その表情は、今回の催しの感想を表すかのように満面笑顔になっていた。
　その横顔を見ながら享楽は思う。
　
　（みんなの慰労になればと思ったが、この笑顔は救われる。これではどちらの慰労かわからないさ。）

　ぐっと顔を上げ、一気に杯を空ける。
　と、空いた杯へ三花が羽で器用に酒をついでくれる。

　ドーーーーーーーーーーーーーーーン!!
　「みんな・・・いつも本当にありがとう」

　「花火上がったさ！！」
　「すごい大きいです！！」

　三花が花火から享楽へ視線を移す。
　「いま、なにか？」

　「いや、何でもないさ！！花火見るさ！！」

　享楽が一声あげる。
　「たーーーーまやーーーーーーーーーーーーー！！」

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[SummerVacation参加中]
　楽しく色んな結果見せていただきました。
　主催者様であるEno68　サイ＝マゼット殿に感謝を。