押された念に同意してモクは偽の頬を触る。

さらさらとしていて、ほんの少しだけ指を曲げるだけで押した部分に影が出来る。

自らの頬に触れつつ、モクはそうつぶやいた。

　熱が入りすぎて周囲へ被害を及ぼした事も多い。便利な反面その弊害もある。

　外見の面倒はどうしようもない。それでも構わぬという、懐の広い場所があるとよいが。

偽のどことなく子供っぽいジェスチャーに、思わずクスッと笑いながら同意の頷き。

どうも妙なイメージを持ってしまったらしい。

そういう人物に会った事があるらしい。

御肉がいいかしら、と戦闘の事ではなく料理の事らしい。
彼女らしいと言えば彼女らしい発想ではあるが

　息を詰まらせる。
　引き下がろうとして踏み止まった。
　逃げを、打とうとしたのか。
　それを留めたのはなんだったか。

「……俺は、お前を殺すぞ」

　呻き声に他ならなかった。

「俺は、俺を愛す者を殺すし——俺は、俺じゃない。俺じゃなくなる。……帰りたいとは言うが、もう保たない」

　知っているんだと唇を噛む。

「この世界で自分をなくして彷徨うか、その前に、死んでしまうか。それしかない。俺には——なのに、」

　傍にいたって。
　愛したところで。

「何一つ、残らないだろう」