Side:B　うつろう世界


しゃき　　ん　　　　しゃ　　き　　　　　
　　　しゃ　　きん　　　　　　　しゃ　　　　ん



月明かりに色めく裁ち切り鋏が、擦れ合って鳴く。
裁ち切りの鋏を片手に詠う。

選定を貪る鎌と、共に鈴生りの珠に弾かれて転がる。
爪先に鋏の柄がかちあい、くたりと鈍い音を響かせた。

小気味良い音がしゃきんと鳴りて。





「———おいで」





誘引するか細い聲は蜻蛉玉と共に揺れた。





「こっちに、おいで」






臆病な眼が待ち人を誘う。その声に伝う人は誰もいない。





「……あなたは　誰ですか？」






鋏を片手に剪定し、枝を切り分けて、誘う妖女は囁いた。

そう言うと、去ってゆく背中を見送った。

マッスルポテトには少々苦手意識がある樣子。

そう言う自分も熊っぽい人ではあるのですが

そんな食糧問題も、蜜の前ではどうでも良くなってしまう様で

　物質的な面ではド貧乏と言える故郷の状況を思い返し、ため息をつく。

　やはりネクターが必要という言葉には頷くしかなかった

　本物のネクターの花。
　凛と立つ少女の手にある赤色をじっと、じっと見つめ続ける。
　やがて。この花を植えた場合どうなかという、問いへの答えを受け。ゼゼは言葉を吟味し、思案する。

　そしてネクターであってネクターではない、と語られる結論。
　発芽からのプロセス全てを飛ばして咲く花など。植物の定義から逸脱している。
　いびつ。しかし甘く誘う言葉だ。
　枯れようとする土地に芽吹かせるにはこれ以上無い良条件とも考えている自分もいた。
　自然であることを良しとして、目の前にある好機を手放すか。
　それとも、あくまで効率を優先しその歪みを受け入れるか。

　トカゲは考える。試すような偽の視線を受けながら。
　考え、その答えを声にする。

　甘い判断だと思った。だがそれでも、

　正直尾を引かれる思いはあった。それでもゼゼがこの言葉を翻すことは無いだろう。

彼女とシズの会話を、ルカは不思議そうな顔で眺めながら、聞いている。
一応、聞いてはいるのだが、その会話の意味をどこまで理解出来ているのかは、なんとも。

“彼の居る手前”だなんて言ったって、ルカは何が失礼なのかも分かっていない。
（ルカにとっては）分かり難いのだと思う。 シズの横で、小さく首を傾いだ。

言い振りからして、過去にも人助けをしたことがあるらしい、と判断して。

ネクターのことについて聞けば、

良い子、と言われて、一瞬きょとんとしたように。それから、続く言葉に。

もとの様子にもった彼女に安堵しながら、軽口を返す
が・・・

この話題には、そんな軽さも吹き飛んでしまう
なぜって

（綺麗な所作で腰に下げた鞘から長剣を抜き放ち、片手で構えを取る）

（綺麗な所作で腰に下げた鞘から長剣を抜き放ち、片手で構えを取る）