再び小川から大きく地形が変わった。

今度はぺんぺん草すら生えていない、乾いた大地だ。

アシュレイは得意げに言うと、くるりとその場で一回転。

無視するアハトを気にするでもなく、上機嫌で進んでいくアシュレイ。
ふと足をとめ、あれ、と指差す。

その指先、ゆらゆらとする景色のなかに、人影が見えた。黒ずくめの衣装がすごく目立っている。

この砂漠のなか、忍び足で移動しているようだ。周囲の様子を見ながら慎重に足を進めている。

笑顔で言うなり、アシュレイはポーチから１つの小瓶を取り出す。

小瓶に貼られているのは、髑髏が口から血を零す絵がプリントされたラベル。

絵の下には可愛らしく字体で「たぶん即死」と刻まれている。

皮手袋をはめた左手で小瓶のキャップを外し、中身を空中に振りまく。

飛散した液体はそのまま地面に落ちることなく、ゴボゴボと音を立て、水球の形となった。

水球が出来上がるのと同時に、アシュレイが己の体に刻まれたルーンを起動させる。

即座に指示通り、水球は矢の如く、黒ずくめの衣装へと飛んでいく！

だがしかしなんの偶然か、黒ずくめの衣装はこちらを振り向いた。
飛来する矢を見るなり

「ひぇああッ！？」

と叫びうずくまり間一髪、着弾の瞬間に標的を失った矢は黒ずくめの背後の砂へ着弾。

ジュワワアアアアッボゴッボゴッブスブスブス

紫色の煙を噴き上げながら溶ける砂。

「なな、なんだ貴様らッ！」

黒ずくめはうろたえつつも臨戦態勢をとる。

アシュレイは笑顔のまま再び別の小瓶を取り出し、緑色の水球を展開、再度射出体制をとる。

探している本の話が何も聞けなくてイラついてるのかな、と思いながらアハトもアシュレイに続き自身の周りに水球を生み出し、構えをとった。