[ 自動書記文箭の記録より ]

「文ちゃんみーっけなー！」


手を高々と振って、野良が駆け寄ってくる。
その後ろ、アイリスとエルザがゆうゆうと歩いている。

己の前には、撃ち伏された戦乙女が膝をついていた。
顕現できる力をもう残していないのだろう。間もなく光の羽根をふわりと残して、彼女は虚空へ消えた。戦いの痕跡ごと。

「野良さ——」

駆け寄る野良に応えようとして、体が瞬時に硬直する。

「——なんですかその顔。アイリさん。ねえ」
「人の顔に文句をつけるのはどうかと思うわ、文。
私は男女平等を唱えようとは思わないけれど、女に手をあげるのはどうかと思うわよ」
「どうかと思うで耳にタコができそうです。手をあげるって……もしかしなくともヴァルキリーの事を言っていますか」
「それ以外に何かあったかしら。あったのなら早目の自白をオススメするわ」
「ありません。ていうか、君達も人の事言えないでしょう」
「私達はいいのですよ。女性ですから」
「えっ、なにこの理不尽」

首を傾げた野良が、何をどう理解したのか、「なー！」と拳を宙にあげた。
そのまま己のそばを素通りしていく3人は、そう、紛れもない女性で、己は——

「……あの、僕は無性ですよ」

ちくしょう誰も聞きゃしねえ。






それにしても、戦乙女を仕向けてきた者達は、不思議な事を言っていた。
新王についての事が頭に引っかかる。
本日はこの先のルートについて、エルザから提案があるようだ。
ために、彼等に関しては後程記述する。