城らしきものを目指して歩いていると、距離にして凡そ６００程の
ところに黒い人影が見えた。

「参加者……か、何かですか……？　それとも……」

そう、危惧すべきは敵性勢力の存在。
仮にあの人影が敵性勢力であった場合、周囲に出てくる雑多な生物
と違い、戦術・戦略的な物を仕掛けてくる可能性が高い。

「できれば避けて通りたい物ですが、そうもいかなそうですし……。
　仕方ありませんね」

話して分かるようならばそれでよし。
そうでないのなら排除行動に移るだけの話しだ。

内心面倒だと思いながら、人影に近づいていくと声が聞こえた。

「即刻立ち去るがいい！世界に害をなす虫けらめッ！！」

ああ、はい、やはりというかなんというか、思いっきり敵性存在です。
その立ち振舞いを見る限り、城の衛兵か何かでしょうか。
しかもとても黒いです。黒に染まると言うやつでしょうか？
いずれにせよ、排除対象として認識して間違いなさそうです。

「面倒……」

私は誰に言うでもなくぽつりと呟いてから、戦闘用のモードへと移行した。

　・
　・
　・
　・

「ブ、ブランチマン様……」

どさり、と音を立てて兵士らしき人物が倒れたのを確認し、通常モード
へと移行する。倒れたとはいっても、気絶程度だ。その程度の加減はしている。
機械の私と違って、少し加減を間違えただけで、感単に人は死ぬのだ。
ロボット三原則ではないが、倫理的観点からみても、それだけは避けねば
成らないだろう。無駄な殺生をするのはよくないと思う。
こういう時は、無駄に優秀なＡＩが憎い。
機械は決して人間成れないのに、創造主は何故こんな機能を付けたのか。
ＡＩがなければ、理解に苦しむということも無いのにとも思えてくる。

「感情の発露や思考ができるのはＡＩのお蔭だけれど……難しいものね」

それよりも、ブランチマンと呟いていたのはなんだろう。
「様」を付けているところを鑑みるに、上司の名前だろうか？

「とりあえず、進みましょうか」

先へ行けば何か分かるだろう。
そんな楽観的かつ希望的観測を胸に、歩き始めた。