ボクは目の前のセイレーンを前にして深呼吸をしていた。
セイレーンはおとなしくボクの言う言葉を待っていてくれてる。

アリスに急かされて、ボクはそろそろ覚悟を決めるべく、セイレーンに一歩近づく。
そうだ、これで3度目。前やった事と同じ事をやるだけなんだから、難しい事は無い。
そう言い聞かせて、ボクはゆっくりと口を開き──はっきりとセイレーンに伝えた

　セイレーンは一目散に逃げ出した

アリスが何故か納得してるけど、ボクは良くわからずオロオロしていた。
うぅん。何がいけなかったんだろう……逃げたセイレーンを追うのは諦めて、ボクは、初めてエンブリオと契約した2日目の事を思い出していた。

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　　2日目

ボクは少し間の抜けた声でアリスの言葉をおうむ返しに聞き返した。

アリスの言う通り戦えるわけでもなく、お金を持ってるわけでもない。
それを聞くと、アリスはどこからか取り出した紅い花をボクに差し出した。

ボクは受取ながらもその花をしげしげと眺めた。
うぅん、確かに綺麗な花だけど、そこまで特別な物って感じはしないんだけどなぁ。これの花びら１つでエンブリオがボクに戦う力を貸してくれるらしい。
……この花のどこがそんなにエンブリオにとって魅力が有るんだろう？？
魅力と言えば確か王様はこの花を独占しようとしてるんだっけ？ふむ〜。この国の人達にとってはとてもいい物……なのかなぁ。

ボクがそんな風に花を眺めながら考えていると、アリスがどこからか少女を連れて来ていた。
──ってこの短時間で連れてくるとか無理だろ！そう思った通り、少女は人では無かった

静かにたたずむ水霊の少女。何も言わずにじ〜っとこちらを見つけて来る……うぅ、なんか凄い恥ずかしいんだけど。
ボクは恥ずかしさをごまかす為に、アリスに視線を向けた

ふむ。名前か……ボクは改めて水霊の少女に視線を戻した──目を合わせない様にしながら。
…………よし。

水霊は、名前と共にボクが差し出した花びらを笑顔で受け取ると、そのまま消えてしまった。
……え？あれ？？え！？

顔を真っ赤にしながらアリスから顔をそらす。
くそ、しまった。無我夢中で書物の中の主人公みたいにかっこいい事を言ってみたら……これは当分いぢられるな……

ともあれ、これで戦う力が手に入った……んだろうか。まだ実感はわかない。
けれど先日の戦い。アリスの存在。そして今回の契約。──姉さんと共に過ごしてたら決して会わなかった人達、そして出来事。
そんな積み重ねがこれは夢でも何でもなく、そして本当の戦いなんだなって事をボクに伝えて来ていた。

姉さん。ボクは姉さんみたいに強くなって、無事に帰る事が出来るのかな……

ちくしょう！こいつ、今度絶対泣かしちゃる！！

あ、しまった。と呟き。

少女は少し悩み。

私の時代にも終わっていた。だから農民が自由に生活ができた。だが、新王は・・・

この闘いが終われば、彼は自分が住んでいた場所へと帰っていく。だから、その願いは叶うことはないだろう。