まずは前回分の日記をシュー！！







　今日進攻先に選んだのは、城の庭のような場所。

　蝶が舞い、色とりどりの花が咲き誇るその光景は、まるで楽園のようで。

「奇麗ね……」

　思わずそんな言葉が口から出てしまう。

———住民から根こそぎ全てを奪っちゃう悪逆非道の王サマにしちゃ、なかなかいい趣味をしてるよねぇ〜。

「ま、奇麗なものを愛でる感性を王が持ち合わせていなかったなら、住民は今よりも数倍幸せだったでしょうね」

———どーゆーこと？

「ほとんど精神だけの存在なのだから、少しは頭を使いなさいこの駄杖。貴方から頭脳労働取ったら、何も残らないわよ？」

———ちっ、うっせーな。（反省してま〜す）
…………あ゛。

「＾＾」

———＾＾


　 nice boat
（ステキな船の映像でしばらくお待ちください）


「ほとんど精神だけの存在なのだから、少しは頭を使いなさいこの駄杖。貴方から頭脳労働取ったら、何も残らないわよ？」

———ワーイ、ネーチャンニゼンヒテイサレチャウナンテウレシイナ！　ソレダケデボク、ボク……！（ビクンビクン）

「矯正し過ぎたかしら……」

———ダイジョウブ、モンダイナイヨ。ヨウスルニアレダヨネ。

「とりあえず片言で喋るのはやめなさい」

———アイマムだよ、ねーちゃん！
要するにアレだよね、王サマの感性が欠落してたら、そもそもそういう奇麗なモノを奪おうなんて考えにすら至らないってことだね？

「そういうことよ。ま、それこそ世の中のモノ全てを貪欲に求めるくらいの意気がなければ、王になんてなれないとは思うけれど」

———それじゃ、ねーちゃんの全てを貪欲に求める意気満々のボクは王の器ってことだね！

「貴方の言う世の中にはあたししかないのかしら……？」

———うん。

「即答！？」

　その間は、コンマ1秒も無かったと思う。





　そんな会話をしつつ、慎重に歩を進めていく。

　……と。

「門みたいなものが……と、見張りがいるわね」

———どうする、正面突破する？

「いきなり出てくる案が何でソレなのよ…」

———スパ●ボじゃ正面突破でFAは常識だよ？

「知るか。……あたしに考えがあるわ」

———何か失敗するフラグが……。

「いきなり不吉なことを言わないでくれるかしら…？」




　『準備』を済ませ、門の見張りに近づく。

　と、こちらに気付いたのか、不機嫌さと怪訝さが入り混じった声音で見張りの男が言う。

「貴様、何者だ？」

「あの……わ、わたしこのお城で使用人を応募してるって聞いてきたんですっ。でも、その、途中で道に迷ってしまって…」

「ここが王の城内と知らぬわけではあるまい…？　不法侵入は極刑だぞ！？」

　男が凄みを利かせて言う。

　その行動に対し、極力怯えた風を装い、

「ひっ……！　ご、ごめんなさい！　勝手に入ってしまったことは謝ります。その……な、何でもしますから…許してください」

———ん？　今何でもするって

　こっちは無視しよう。

「ふむ……そこまで言うのなら、不法侵入の件は不問にしてやらんでもない」

　と、そこで男がわかりやすい下卑た笑みを浮かべる。

「……が、少し身体を探らせてもらうぞ。何、武器などを隠し持っていては困るのでな……」

「えっ…？　で、でもそのわたし、男の人と手を繋いだ事も無くてっ……」

「約束を破ってはいかんなぁ。何でもするのだろう？」

　と、ティーを同じようなことを言いつつ、男が近づいてくる。

「や…乱暴なことはしないで……」

　あえて嗜虐心を刺激するように、怯えきった表情を作る。

「ふん、大人しくしていれば乱暴などせんさ…」

　そして、男が最接近したところで、

「ぐがっ！？」

　即効性の催眠針をヘッドドレスから取り出し、男の首筋に素早く突き立て、

「……ごめんなさいね。全部嘘なの」

　ニッコリと笑い、耳元で囁く。

「んな……！？　きさ……」

　その言葉を最後に、男が意識を失う。

　そのまま倒れて派手な音を出されると少し面倒なので、その身体を受け止めつつ、

「さて、と。これで作戦終了ね。目覚めた時には、あたしの質問に何でも従順に答えるお人形さんって寸法よ」

　ゆっくりと地面に横たえる。

———うわー、相変わらず容赦ないね〜。

「命まで取らないだけマシでしょう？　ま、後遺症くらいは残ってしまうかもしれないけど」

———あんまり大した情報は持ってなさそうだけどねぇ。いかにもな三下だったし。

「戦わずに無力化できただけマシよ。貴方も色々と堪能できたのではないかしら？」

———いいや、全っ然。

「えっ」

———もうね色々なってないのまずメイド服に着替えたわけだけどメイド服というチョイスは評価するよというかもうむしろグッジョブといいたいところなんだけどまず着替え方がなってないの何で数秒とかからずに早着替えしちゃうのここは魔法少女の変身シーン的な演出バリバリであざといくらいにチラリズムを入れながら着替えるべきじゃないかと思うのまあ文字だけじゃ無理かもしれないけどあーメタくてごめんねそれから臆病な少女演技だけど残念ながらボクドMだからもう一度言うけどボクドMだからあんなんじゃ全然興奮しないのむしろ萎え萎えなのそりゃ演技っていうのわかってるからしょうがないけどでもボクがねーちゃんに求めているのはそういうのじゃないのむしろ高圧的なメイドさんとかいてもいいじゃないご主人様手玉に取っちゃうようなドSメイドねーちゃんはぁはぁなんだよその期待を裏切ったねーちゃんの罪は海よりも深いわけで

「ご、ごめんなさい、ティーご主人様ぁ…。とってもHなマッサージでご奉仕するから許してください……」

———いやもうだからぁ、ボクが求めてるのはそういうんじゃなくって、えっちなマッサージとかいらな……はぁうっ！？　これはひょっとして、えっちではなくてハードなマッサージ！？　やったー！！　こういうのを求めていたんだボクはぁっ！！　こう、この全身の金属がメキメキ音を立てて軋む感じがたまらな……そ、それ以上はらめええぇぇぇぇ！！


----------------------------ここから今回分です----------------------------


　こんにちはっ！　あたしロッテ！！

　あ、日記なのに『こんにちはっ！』っておかしいよね（>ω・）てへぺろ☆

　どこにでも居る普通の歌って踊れるアイドル傭兵（４５）のつもりだったんだけど、不思議な魔法の杖を見つけちゃって、さあ大変！

　そんな不思議な杖———ティーとの出会いを書いていっちゃうよっ！



　彼との出会いは本当に偶然。

　あたしのいた世界で任務をこなした帰りのこと。

　人気の無い路地裏を歩いてて、ガラの悪いおにーさん達に囲まれちゃった時のことなの！

「ぐぇへへへ……」

「や、やめてぇ！　あたしに乱暴する気でしょう！？　エ●同人みたいに！！」

「ねえ」

　って感じで、ホントはよゆーでシュンコロだけど、絶体絶命っぽい感じでシーンを演出してたところに……。

———問おう。キミがボクのねーちゃんか？

「ねえ…」

　って、直接脳内に語りかけながら、颯爽とあたしの前に現

「さっきから話しかけているのだけど、聞こえていないのかしら？」

———全くうるさいな〜。今いいところなんだから、邪魔しないで欲しいんだけどさ〜。

「それは悪かったわね。……で、あたしの日記に、一体ナニを一生懸命書き込んでいたのかしら？」

———す、全てに等しき真実……かなっ☆

「^^」

———^^
あ、ボク知ってる！　これ天丼って言うんで


　 nice boat
（ステキな船の映像でしばらくお待ちください）

「……で、あたしの日記に、一体ナニを一生懸命書き込んでいたのかしら？」

———ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
ねーちゃんの日記が事務的で華が無いな〜と思って、ちょっと面白おかしく演出したかっただけなんですごめんなさい生きててごめんなさいドMでごめんなさい変態でごめんなさいねーちゃんと同じ空気を吸っててごめんなさい戦闘中にねーちゃんの汗が身体に付く度にハァハァしててごめんなさい……。

「ちょっと怖くなってきたからやめなさい、後、最後普通に気持ち悪いから。大体、歌って踊れるアイドル傭兵なんてどこにでもいてたまるか」

———世界は星の数ほどあるんだし、探せば一人か二人くらいはいるかも？

「あっそ……」

———強制的に話を打ち切られた！？

　そんなどうでもいい、いつもの会話を繰り返しながら、ふと思い出す。

　ティーと『再会』したあの頃のことを。