マキリは唖然とした。

　部屋に広げられた"ソレ"はまるでバラバラにされた死体のようで。
　相当な量の腕や足が転がっている。

　マキリはおどおどしながら声をかける。
　さながらその光景に唖然として必死に説明を乞うているかのようだ。

　それはそうだろう。
　バラバラ殺人死体を部屋の中で広げられれば大抵の人は混乱するだろう。
　彼の反応は極めて正常だったと言える。



　そも、そんな状態になった原因というのは今から５時間ほど前まで遡ることになる。





*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+**+

　朝というには遅く、昼と言うには少し早いそんな中途半端な時間を時計が刻む頃。
　ぬこはまだぐぅーすかと寝ている。
　ソファーで寝泊まりしているマキリそんな彼女を横目で眺めつつ少し遅い朝食を頬張っているところだ。

　ここ、タンポポ荘は空に浮いている為か空はとても綺麗で。マキリもそれは気に入っている。
　そんな風に窓から外を見ていると目の視界に何かが映る。


"とても黒い猫"


　いや、普通の黒猫と表現したいところだが、何かがおかしい。
　姿形は猫なのだが、あまりに黒すぎて毛並みも何もわからない。
　そこだけ光から切り取られたような、そんな異様な黒さがある。

　慌てふためくマキリとは対照的に、マイペースに起き上がるぬこ。





　そして、また寝る。

　相変わらずのマイペースである。いや、それは良い。が・・お客・・・？入れて良い・・・のか？
　戸惑いながらもマキリは窓をあけた。するとその猫は小さく礼をしてらすぬこの前まで歩いていく。


　そして、次の瞬間・・・・




『起きろ！！！馬鹿者！！！！』



　突然の大声にぬこはベッドから転げ落ち、マキリは壁の隅まで逃げいていた。
　ふぎゃっとベッドから落ちたぬこが面倒くさそうに顔をだし、その猫に話しかける。

　大きな大きなあくびである。猫は呆れたかのような素振りを見せる。
　もちろん、まっくろなので表情は読み取れないが、なんだかそんな風にマキリは感じた。


『まったく、お前は相変わらずだな。ヤレヤレ。
　まぁ、手短に話そう。七切のカラダはコチラで組み立てる。
　その為の人形技師ももうすぐこちらに到着するだろうから迎えにいってくれたまえ。』


　マキリには何の話か全くわからない。が、それを聞いたぬこの顔は真剣で。

『村で組み立てていると怪しまれるのでな。
　それに、彼の魂としても早めに馴染ませた方が良いだろうしな。』

『あの人形師の名家の娘だ。仕来りの遠征も兼ねているから、深い事情は知らない。
　だが、腕は確かだ。おそらく外の世界も初めてであろう。案内してやってはくれないか？』

　

『お前が来た処と同じだよ。それでは、任せたよ。』



　そう言い残すと黒い猫はすぅーっと風景に溶けこむように姿を消した。
　唖然としているマキリに"アレは使い魔のような物だよっと付け加えつつ"

　そう話しながら二人は向かう。らすぬこが最初にこの世界に着た時の場所へと・・・・。



　（次回に続く・・・）

ぴたりと止まる。

などと言いながら、手元ではきちんとコーヒーの抽出を開始した。

ばちん。
頭に触られたのが嫌なのか、手をはねのけると素早く数歩後ずさって距離を取る。

飛び回っていた白いのはそれを見るや、Uターンし弥千代の頭の上に戻ってきた。
弥千代の角を身体で隠すように覆いかぶさり、ふーふーと威嚇しているようだ。

　マキリの言葉に顔を真っ赤にしながら怒るクーリア。

　それでもちゃんと心配はしてくれてるみたいです。

　クーリアにとっては、人のために何かをするということは当たり前のこと、マキリが自分の何を指して、優しいとか、真っ直ぐだとか、心配になるとか言っているのかすらわかっていないようだ。