トリーにとって車とは、家畜あるいはエンブリオに牽引させる車輪のついた荷物運搬の道具である。
だから、軽トラのようなピカピカした車は見たことがないし、自律して動いて、しかも喋るなんてとても驚いた。自分が知っている車とはまったくの別物だ。触るととてもひんやりしていて、でも温かいところもあって、直接触ろうとしたら窘められた。嗅ぐと金属特有の匂いがして、舐めると変な感じ。
ギャリィは自分で動くことができるのに、トートの操縦で動くことが多い。
それはなんだか変だなと思った。

トートは「なんでもない屋」であり、ギャリィは「ものづくり」ができるらしい。

ボキッ
力任せににんじんを握ったらあまりの強さに真ん中で折れてしまった。

折れたにんじんの上半身と下半身を掴み、ぐぐっと力を入れてくっつける。
密着するよう、更に力をかける。

すると、にんじんの結合部分が弱く光り、自然な状態へ繋がっていく。
光がおさまった時には折れたことなんて嘘かのような新品のにんじんが！

倒れたにんじんを見て、思わず叫ぶ。
どうやら、打ち所が悪かったらしいな。


にんじんに打ち所とかがあるのかは知らんが。


しかし、やはり一筋縄ではいかないようだ。
にんじんの亡骸から煙が生じ、ふたたびにんじんの姿を形成する。


ジーザス！

奴は不死身か！？


にんじんの形をした『何か』は俺に語りかけてくる。

そんな芸当までやってのけるとは、やはりこのニンジン只者ではない。




『ニンジンが目立つのはカレーでだけ』





そんな認識は改めなければならないようだ。






どくにんじんの話は続く。
どうやら、奴は肉体から分離した精神体であるということ。
やはり奴は不滅の身であるらしい。






しかも身体を無くしたら5kgの体重が減ったいうことは、もとのにんじんの身体は5kgもあったということになる。俺はそんなのを食べてたのか。

後ろのベルがうるさい。





と、そのときどくにんじんが急回転をはじめる。


そのまま、俺の口に飛び込んできた！！

そのまま口から胃を通過し、腸をとおり、尻から外に現れた！

…ような気がする。






精神体だからか特に感覚は無かったが。


危なかった。



もし、これを実体にやられてたいたら完全にラインを超えた事態になっていたことだろう。

いつのまに現れたのか、少年が叫んでいる。


え？俺今ので死んだ？




と、あわてたがどうやら違うらしい。

少年はにんじんから俺のほうに向き直る。

少年から怒声が飛ぶ。
その右手にはナイフが。




少年が震える手で俺に向かってナイフを構えた。
しかし、ナイフの構えからわかる。


彼には戦闘経験が無い。
つまり彼のナイフなら避けることはできる。






いきなり刺されて死ぬということは無さそうだ。





しかし、この状況。





目の前では鋭い輝きを湛えたナイフが。






その横では下半身のみのにんじんが優しく俺達を見守り。







さらにタイガーの荷台では上半身のにんじんが元気にはしゃぎまわっている。



なんだこの状況は。




俺は混乱した。
しかし、やるべきことはわかっている。

俺は一瞬で少年との間合いをつめるとそのナイフを奪う。




そして次に最速で荷台に飛び乗ると、走り回っているニンジンをとっ捕まえる。



そして、にんじんをナイフで調理しはじめた！





ナイフを包丁のように扱い、にんじんをきれいに乱切りにしていく。
切ったにんじんは鍋にぶち込み、手持ちの食材やら材料やらもぶち込む。

そして着火！！
ものすごい勢いの炎で鍋を煮込む！！



しばらく煮込んだら完成だ！
これが料理レベル4の力…

鍋にはオレンジ色のいかにも身体に悪そうなカレーができあがっていた。

少年に無理やりすすめる。
というか、にんじんを食べてからテンションのあがりかたがおかしい気がする。

きっと気のせいだろう。

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