今日から日記をつけてみようかと思う。そう、ちょっと特別な日だから。

前々からこの仕事に向かないとは言われていた。勿論、それを自覚してはいた。
依頼者から提示される金額が全てであり、自分の意思は関係なしに依頼を全うするのが傭兵というものだとはわかっているけれど。流石についていけなかった。
王がなぜあのような事を始めたのかはわからない。わかりたくもないけれど。それでも、私は……。

しかし、前王に雇われある程度の誇りを持って続けてきた物を放棄するのには、結構な勇気を振り絞ったものだ。
ただ、おかげで今はある種の解放感にも似た感覚に包まれている。「自分の意思で、自分の思うがままに動く」というのは、かくも清々しいものなのか。
私のやりたい事……そう、誰かを守る。かつてのあの人がそうであったように。
そして、いつかあの人に会った時に言ってやるのだ。「どうだ、私だって兄さんのように……


/t2/……全く、血の繋がりがあるのにあの人とはまるで似ていないな、私は。


こんな所か……。忙しくなってくるであろうこれからが、不安と同時に楽しみで仕方がない。
まずは仲間を探す事から始めるべきだろうか。そうだな、何度か見かけたあの不思議な男性をあたってみようか。
しきりに何か口にしていたな……。「蕎麦」だっただろうか。恐らくは食べ物の類なのだろうな。
それについても詳しく聞いてみよう……。