「それで、これからどうしますか？」

訳も分からず巻き込まれることになった今回の一揆は、自分達の与り知らぬところで終結を迎えようとしているらしい。街角の掲示板でそんな情報を得た夢路は、同居人に訊ねる。

『ふん、本より気紛れで参加しただけだ。今後の事など考えてもいない』

対して発せられた言葉は実に素っ気なかった。或いは、一応は故郷を護れたという喜びを隠すための“彼”なりの照れ隠しだったのかもしれないが。

『折角の郷帰りだ。暫くはここに留まるのも悪くない。お前も、元の場所に帰りたい訳ではないだろう？』

「そうですね……貴方がいれば、何処にでも行けそうですけど」

『戯言を……。まあ、交換条件だったとはいえお前は何かと上手くやったからな。対価として、何かやりたいことでもあれば付き合ってやらないこともない』

「やりたいこと、ですか……？」

呟いた夢路は黙り込んで思案する。望んでいた物の内、一番欲しかった物はもう手に入ってしまった。他に、何か。

「世界の、果てを」

『ん？』

「この世界の果てを、見た事はありますか？」

夢路の口から出たのは余りにも抽象的で、突拍子もない問いだった。しかし“彼”は茶化す事無く答える。

『ふん、考えたこともなかったな。なら、散歩がてら“世界の果て”でも見に行くか』

「——はいっ」

“彼”が同意してくれた事が。何よりも“彼”とまだ一緒にいられる事が嬉しくて。夢路は笑みを浮かべる。

“世界の果て”を、“最果て”を見に行く。いつ目的が達せられるかも分からない、壮大な散歩。偶々出会った同行人の彼女は付いて来てくれないかもしれないが、別にそれでも構わない。

傍らには“彼”がいる。

もう、独りではないから。