敵は思っていたよりも賢く、力も強かった。
魔物の一匹がソウハが纏っている術式を引き裂き、無防備になったソウハに別の魔物が重い直接攻撃を加えてあっという間に戦闘不能に追い込んでしまった。

迂闊だった。
大型術式を発動している最中にも関わらず、うっかりソウハに気をとられて集中を切らしてしまった。
魔物たちはその隙を逃さず、ソウハに見舞ったように重い一撃を放ってきた。
ソウハに気をとられて無防備になっていたアラヤはそれをかわすことができなかった。

痛覚を切っていなければ間違いなく動けなくなっていただろう。
最悪の場合、失神していたかもしれない。
身体が勝手に跪きそうになるのをなんとか堪え、追撃を仕掛けようとする魔物たちとの間に氷の壁を生成して足止めする。

翼を形成する術式を解除し、緊急用の魔力を身体に取り込む。
最低限の自己修復を施した後、急いでソウハに駆け寄る。
地面に倒れ、意識が朦朧としているソウハをなんとか回復させる。
さらに魔力を分け与えたところで背後の氷の壁が崩れ落ち、先ほどの魔物たちが現れた。
狼男の一匹は崩落した氷の壁に埋もれてしまったようだが・・・厄介なことに、騒ぎを聞きつけた別の魔物たちが数匹加わっている。

消耗しきった状態での2対5。
正直状況はよくない。
しかも狼男の嗅覚や妖精の探知能力で逃げ切るのも難しいだろう。
それにアラヤは翼を解除してしまったから飛ぶこともできない。
もはや戦うより他ない。

小声でそれだけ告げると、誤魔化すように魔物に向き直る。